2014,04,02, Wednesday
苗木を植えるための穴掘りを始めたのは、2月はじめのこと。面積の大部分は、もうずっと耕作放棄されていたところで、1年かけて開いて、整理してきました。
僕は好んで、穴掘りには鍬を使います。まだ蔓(かずら)や雑木の根が残っているのでスコップでは歯が立ちません。それに加え、その他いくつか利点もあります。他の作業や出荷も進めながら、合間々々に時間を作って、掘っていきました。 200個ほど掘ったころには、朝、目が覚めると手の先がビリビリとしびれ、腕も重たい。背中から腰にかけて筋肉が分厚くなっているのが分かります。もちろん、痛い。 食欲も若い頃のよう。高校生のときなどは、朝食をお腹いっぱい食べて登校したのに、3時間目前の休み時間には弁当を食べ終わっていて、昼は購買や弁当屋で購入して補てんします。それにも引けを取らないほど、ずっとお腹が減っている。 穴が400個に達したころには、もう満身創痍といった感じ。他のことに気が回りません。(わ)が家事をしている間の子守りくらいは引き受けますが、せがまれたって、『タカイタカイ』なんて、とてもとても無理よ。そのかわりに背中に乗ってよ、ジャンプしたっていいから。 それでも園地に入ると、体は動くものだから不思議です。ひとつ穴ができるたびに、ふぅっ、と空を見上げます。これがいい。田舎に暮らして、こんなに広い空があるのに、見上げるということは、あまりしていないものです。 ようやく掘り終わり、今度は苗木を植え付けていきます。苗床をこしらえて、昨年から育ててきた柑橘苗木から移植していきます。根が張っているので、これを掘り起こすのもなかなか大変です。 次に予約注文しておいた柑橘苗木に防風用の樹木苗、そして一年鉢植えで育ててきたアボカド苗木を植えていきます。苗木は生き物なので、やりはじめたら中断することはもちろんのこと、作業としても、なるべく後回しにしたくないもの。定植直後から、水もたっぷりやらなければなりません。滞りなく進むよう、苗木の到着時期も計算に入れて、段取りも何か月も前から考えてきました。 そしてこの日、追加注文したレモン苗木60本を最後に、とうとう全部、植えきりました。 言ってみれば内祝いのようなもの。まだ(す)が全快とはいかないまでも、大分持ち直していたので、気持ちよく酔っぱらわせてもらいました。「おつかれさまー!」と大声で、(う)に差し出されたビールが旨かったこと。 果樹は苗木を植えてから収穫を迎えるまでに、何年もかかります。柑橘なら、経済栽培として、それまでの労力までをも取り返すのに、10年くらいを見込んで手入れしていきます。数年先もまだ見えていないのに、さらに先の未来に向けての投資ですから、正直、これで本当によいのだろうかと、何度も立ち止まりそうになりました。でもそんな不安も、暖かくなれば吹っ飛ぶものだと、自分に言い聞かせながらやり続けました。 新芽が伸び、幹が根元から太ってくれば、もう立ち止まれません。それどころか楽しくてしょうがなくなるのでしょう。「植えたらどうにかなるものよ。植えにゃぁ、どうにもならんがやけん」、誰よりも多くの苗木を植えてきた、年寄り方のおおらかさが物語っています。僕にもそんなときが来るのでしょうか。 この1年は、大いに走りました。大きな怪我もなく、いい1年でした。 さあ明日も、飯を食ったら山へ行かなきゃ。春は何から手をつければいいか分からなくなるほど、やるべきことが目白押しです。 (ゆ) |
この記事に対するコメントの受付は終了しています。
コメント
|
この記事へのトラックバック受付は終了しています。
トラックバック
|