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好きなことはやらずにはいられない ~吉阪隆正との対話


 吉阪先生の、こんな本ができました。

 吉阪隆正さんと言えば、僕の恩師の恩師。多くの人が敬愛していて、建築学科で僕が好きだった先生はみな、授業中にしろ、その他の場面にしろ、この人のことを振り返ることがありました。この人のことを語らずに、自分の学生と向き合えない、ということだったのかもしれません。
 一番印象に残っているのは、後藤先生と一緒にベトナムのホーチミン・シティを歩いたときのこと。ホー・チ・ミン像の前で「吉阪先生に似てる」とつぶやいて、何枚も写真を撮っていました。生身の吉阪先生を初めて感じたときでした。けれど吉阪隆正さんと言えば、やはり歴史上の人物というような、無機的な存在としてしか、受け止めることが出来ていなかったように思います。

 それから、吉阪隆正さんに敬愛の意を表する人々と、少なからず出会ってきました。へぇ、そんな奇怪な人がいるのなら、ぜひにもお会いしてみたいものだと、羨ましく感じていました。
 それでもまだ、どこか、物語の登場人物くらいにしか、捉えられていなかったようです。

 この本を読んで、思わず何度も涙があふれてきてしまいました。僕はきちんと、自分の<まちつくり>と向き合っているのかもしれません。もう何十年も前に書かれた文章が、現代の僕の心を突くのです。吉阪先生を、初めて肌で感じているような気がしました。
 吉阪先生の言葉やスケッチだけでなく、発言の主も、それが発せられた年代も異なる言葉が、ときには吉阪先生が師事した今和次郎先生のスケッチも、何食わぬ顔で同頁にレイアウトされていて、しかもそれが生き生きとして在って、驚かされます。各ページの存在感がケタ外れ。膨大な言葉と図版から選び出されたこのエッセンス集、製作に関わった人たちの、労力の大きさを偲ばせます。
 「Ⅰ~Ⅳ」という大きなまとまり(章)がある中で、「01~09」の小さなまとまりが、途切れることなく同時進行していく構成も興味深い。その性格から、新書サイズであることも納得。とにかく、僕にとってはありがたい一冊です。


(ゆ)
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