How to

第3章.撮影編(フィールドにて)   

第6回.鳥とサクラ

その3


1.狙い

 待ちこがれたサクラには、様々な鳥たちも集まってきます。そしてもちろん昆虫たちも。 今回はそんな社交場で撮影します。
 晴れがましい場所ですから、それなりの装備が必要になります。先ずはどうしても、 望遠レンズでしょう。鳥の写真を撮りたいと思ったら、先ずこれは欠かせません。もちろん 短いレンズでも、撮れないことはありませんが、昆虫類や草花と違って、普通の鳥たちは、 私たちを近くまで寄せてはくれません。長い関わりの中で、人間は鳥たちにとって最も恐ろ しい天敵として遺伝子に刷り込まれているようで、ある一定の距離以上に寄って写させて もらえるチャンスなど滅多にあるものではありません。
作例 3-49:メジロ vs オオカンザクラ
データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm(400mm)、
絞り:f5.6、絞り優先AE、+1.0補正、ストロボ同調
 作例は、メジロで、梅や桜などの蜜が大好物の鳥です。全長が 11.5cmとかなり小さめの 鳥なのでちょっぴり手こずるお相手です。鳥は小さな鳥ほどじっとすることなく、絶えず こまめに動き回って体温を維持しようとしますから、なおのことです。 作例はズームレンズのテレ端 400mmですから、例によって35ミリ換算でちょうど500mmの レンズ画角です。撮影距離は12m位と、まあこの手の鳥としては、比較的引き気味に 撮っています。
 確かに鳥だと分かりますが、これではなんだか余計にイライラが募ってしまいそうな、 絵ですね。これは何故でしょうか?
 まず考えられるのは、絶対的な鳥の大きさでしょうか。画面の中で鳥の占める割合が小さ すぎるために、見る人に何も訴え難いようです。背景は幸いにも抜けるような青空だった ため色彩的には申し分ありませんが、鳥がとまっている枝は、細目で良いのに、ぶら下がった 下側に太い枝が入っています。真横からの光線状態ですから、まだこの程度のトーンで済み ましたが、逆光だったら枝は真っ黒に潰れていたでしょう。せっかく撮影しても、この枝で この角度では、ちょっと無理のようです。
 実は、こんな事はシャッターを押さずとも、ファインダーを覗いたときから 分かっていたはずなのですが、鳥にばかり目が行き、回りが見えていないときに起きる 過ちの例です。
 
作例 3-50:メジロ vs オオカンザクラ 上:作例 3-51 下:作例 3-52
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm (400mm)、絞り:f5.6、絞り優先AE、
+1.0補正、ストロボ同調
 今度の作例は、具合良く空に抜けたいい感じの細い枝先に止まるメジロです。距離も程々 ですし、先ほどの例から見たら良い条件です。たいてい採餌の際に、小鳥は枝から枝へと 花蜜を求めて移動し、直ぐに飛んでいってしまうわけではありませんから、撮る場合の鉄則 通りタイミングを見計らいつつリズム良くシャッターを切り始めます。ここぞと言う タイミングでシャッターを切るのですが、一コマで良いチャンスをものにしようと思って いては、上手くいかないことが多く泣かされます。緊張の糸がほぐれるからでしょうか? 動きのあるカットは、たいていシャッターを切った次のタイミングで披露してくれます。 今までは 悔しい思いに臍をかむことも多かったのですが、デジタルにして一番の悩みが 解消されつつあります。フィルムの残量を気にすることなく、撮影が続けられるからです。 各自のカメラ機能について、熟知した上で撮り方のスタイルを模索すると良いでしょう。

作例 3-54
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:
100〜400mm(400mm)、絞り:f5.6、
絞り優先AE、+1.0補正、ストロボ同調
作例 3-53:メジロ vs オオカンザクラ
 先ほどと同様一つの枝で、様々な恰好をしているメジロです。
生き物ですから、視線がこちらに来ている方が、見る人にも親近感や、インパクトを与えて くれます。「3-53」に比べて、「3-54」は
作例 3-56
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:
100〜400mm(400mm)、絞り:f5.6、
絞り優先AE、+1.0補正、ストロボ同調
作例 3-55:メジロ vs オオカンザクラ

作例 3-57:メジロ vs オオカンザクラ 作例 3-58
作例 3-59 作例 3-60
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm (400mm)、絞り:f5.6、絞り優先AE、+1.0補正、ストロボ同調

作例 3-62
作例 3-63
作例 3-61:ウグイス vs オオカンザクラ
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm (400mm)、絞り:f5.6、絞り優先AE、
+1.0補正、ストロボ同調
作例 3-65:ワカケホンセイ
vs オオカンザクラ
データ カメラ:EOS1D、
レンズ:100〜400mm
(400mm)、絞り:f5.6、絞り優先AE、
+1.0補正、ストロボ同調
作例 3-64:ワカケホンセイ
vs オオカンザクラ
データ カメラ:EOS1D、
レンズ:100〜400mm
(300mm)、絞り:f5.6、絞り優先AE、
+1.0補正、ストロボ同調
作例 3-66:(左上)ヒヨドリ
作例 3-67:(右上)
シジュウカラ
作例 3-68:(左)キタテハ
作例 3-69:(下)モンシロチョウ
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm
(400mm)、絞り:f5.6、絞り優先AE、+1.0補正、
ストロボ同調



▼ブラケティング撮影
 段階露光のことで、露出を決定する要素が多すぎて、適正値の判断に迷った場合に、何段階 かに、露出値を分散させて撮影する方法。
 メーカーにより表記方法は異なるものの、たいていの中級機以上のカメラには機能として 付いています。もう一度カメラの取扱説明書を紐解いて、マスターしましょう。
 一般的には絞り値やシャッタースピードを適正と思われる値から前後させて合わせて 3コマ 撮影します。機種により補正値も0.3EV毎か、0.5EV毎かの設定変更や、+側のみあるいは−側 のみにするなどの変更もできるようになっています。
 また特殊な例として絞り値とシャッタースピードは一定のままで、ISO感度のみを前後させた 撮影や、デジカメの場合は、ホワイトバランスを変えながら撮影する機能なども あります。

▼ホワイト・バランス
 光源によりあるいは色かぶりなどの影響で色温度が様々に変化することは基礎編で書き ましたが、その時に今までの銀塩カメラの場合はフィルターで調整するしか方法が無かった のですが、デジカメの場合は簡単に調整ができるようになりました。
 私たちが色を見る場合、一旦目からの情報を頭の中で判断し考えてから見たという意識が 働きます。この間に脳の中で、これまでのデータベースと照らし合わせて見たものが何で あったのか? 色は何色だったか? 質感は?……等々の 答えを総合して見たと判断し、 経験上から、微妙な色の変化もある程度は補正を加えてゆくことができます。従って白い紙を 見たら本当は赤っぽく見えたとしても、少し本来の白に戻るように努力をして見たよという ショートメールを発信するのです。この白い紙を写真に撮る場合、赤っぽいままで表現法が 的確ならそのままの撮影で済みますが、やはり白い紙はどんな条件の中でも白く表現されて いないと本来の目的をなさない場合は、何らかの補正を掛けて色温度を変えてあげなければ ならないことになり、この調整のことをホワイトバランス調整と言います。