How to

第1章.基礎編(カメラの概要について)   

第10回.適正露出

その5


6.適正露出を得るために  その4
作例 1-37:流れ 1(1/30秒) 作例 1-38:流れ 2(1/125秒) 作例 1-39:流れ 3(1/500秒)
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm、 シャッタースピード優先AE、露出補正:+0.7

d.シャッタースピード優先AE撮影

 作画の目的上、一定のシャッタースピードが必要なときに選択するモードです。
 昔はテレビ画面撮影は、画面の変わり目とタイミングを合わせるため、正確に 1/30秒が出る カメラが求められたりもしましたが、これなどは典型的な、シャッター優先の撮り方でしょう。  他には、川の流れや噴水、滝の水などを撮る場合も、それぞれに見合ったシャッター スピードがありますから、このモードでないと苦労することになります。
 作例は、公園の循環水の流れ込みを撮影しました。1/30秒では、勢いよく流れる水が、幕の ようにどろんと固まっているように見えてしまいました。水流を表現するには、この位の シャッタースピードが適しているようです。
 1/125秒で、泡が見えるようになり、1/500秒では、ほぼ止まった絵になっています。

e.露出補正(実践にて)

 第7回で考え方は書きましたが、撮影現場で、きっと一番迷うことでしょう。補正を上手く こなせれば、写真の質もグンと高まります。見違えるほどの作品を手に入れるためにも、 もう1度作例を見ながら補正の考え方についておさらいをしてみましょう。

i)芽吹きの撮影。
作例 1-40:ネコヤナギ 1 露出補正:+0.3
作例 1-41:ネコヤナギ 2 露出補正:+0.7
作例 1-42:ネコヤナギ 3 露出補正:+1.0
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm
(200mm付近)、絞り:f5.0、絞り優先AE
 これからのシーズン目にする機会の多い、芽吹きです。
 被写体が画面の中で占める割合も小さく、まだ朝早い時間帯の逆光撮影で、ふわふわとした 綿毛や花の感じを表現したくて、背景はトーンが落ちた場所に定めました。補正値を変えながら 撮った画像を見て、それぞれに趣があり選択する段階で迷いましたが、ギャラリーでは、 春の輝きを表現する目的から「1-42」を選びました。
 個人的には、「1-41」が適正だろうと思います。

ii)花と小鳥撮影。
作例 1-43:ウグイス 1 露出補正:+0.3
作例 1-44:ウグイス 2 露出補正:+0.7
作例 1-45:ウグイス 3 露出補正:+1.0
共通データ vs オオカンザクラ
カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm(400mm)、
絞り:f5.6、絞り優先AE

 花と小鳥も、狙いたくなるシーンでしょう。この場合も望遠レンズなどを用いて先ずは、 鳥がなるべく大きく写るよう狙ってみましょう。その鳥の癖を見極めて、ジッとはしていない とは良いながら、意外に静止する瞬間があります。単に動き回っている鳥を追い回している だけでは、いつまでたっても、撮影できません。狙った相手をよく観察することは、どんな 被写体に対しても効率の良い戦法です。相手の出方を知り尽くして、戦に臨めば自ずと戦法も 見えてきます。
 作例は、ウグイスにしては珍しくオオカンザクラの蜜を頻繁に吸いに来る個体が見つかった 時点で成功したも同然でした。サクラの木に入って、蜜を吸うことに夢中になったところが 狙い目です。ひとしきり蜜を吸った後気分が落ち着くのでしょうか、このポーズで数秒固まる 時があることを、見つけました。0.3EVずつずらしての撮影ですが、連写する間もほとんど 動かずに止まっていてくれました。良く陽が当たったサクラの木ですが、狙った枝は比較的 下の方に垂れた箇所で、自木の影がうっすらと入った、サイド光状態です。
 ウグイスの羽色からすると、「1-43」で良いような気がしますが、この場合も枝の影を受けて 暗めなので結果的に「1-44」の+0.7EVを適正と選びました。
 逆光状態なら、もっとプラス側に補正を掛けないと黒く沈んだでしょうが、ここでのポイント は、全体のトーンを露出計は明るいと判断していると言うことです。「1-45」の+1EVでは、 花が白っぽくなり過ぎでしょう。

iii)新芽の撮影
作例 1-46:ミズキ 1 +0.7補正 作例 1-47:ミズキ 2 +1.0補正 作例 1-48:ミズキ 3 +1.3補正
共通データ カメラ:EOS1D、 レンズ:100〜400mm(300mm)、絞り:f5.6、絞り優先AE、
 作例1-40と似た被写体です。セオリー通りに背景は暗めに逆光で葉のディテールを出そうと しています。真ん中の「1-47」が狙い通りです。



iv)朝霧の撮影
作例 1-49:朝霧 1 +0.3 補正 作例 1-50:朝霧 2 +0.7 補正 作例 1-51:朝霧 3 +1.0 補正
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100mm、 絞り:f5.6、絞り優先AE
 朝霧も、露出に困る被写体です。朝霧そのものはなかなか見えませんが、暗めの林の中に 湿気が残った状態の時に、立ち上る湯気と一緒になって綺麗に輝くときが狙い目です。
 「1-51」の+1EV補正では、さすがに霧の粒に反応して、全体に白っぽくコントラストも 低くなってしまいました。「1-50」の+0.7EVを適正と見ました。




作例 1-52:カエデ 1 +0.3 補正 作例 1-53:カエデ 2 +0.7 補正 作例 1-54:カエデ 2 +1.0 補正
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm、 絞り:f5.6、絞り優先AE、

v)紅葉の撮影
 「1-53」の+0.7EVを適正と見ましたが、「1-52」のしっかり締まった黒い幹の色も魅力的で 用途によっては、こちらの方が適している場合もありそうです。