How to

第1章.基礎編(カメラの概要について)   

第9回.適正露出

その4


5.適正露出を得るために その3

c.絞り優先AE撮影 その2

*花や紅葉、新緑の葉撮影。
 引いてあたりの環境も取り込む撮影と、1部分だけをクローズアップして表現する方法が あります。

i)引いての撮影
作例 1-29:
紅葉 1(「冬」-「初冬」-28)
作例 1-30:
紅葉 2(「冬」-「紅葉 2」-65)
データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm、 絞り:f5.6、絞り優先AE、
露出補正:+0.7
 引いてみた場合は、被写体までの距離と、その背景までの距離、前景の有無などによって、 そしてどのくらいの焦点距離のレンズを使うかでも違ってきますが、どの部分まで見せるかと 言うことを、ある程度決めて撮影に臨まないと、現場で迷うばかりで先に進めなくなり ます。
 構図の話はまた別の機会に触れるとして、景色を奥行き広く見せるためには、前景と中景 そして遠景の組み合わせを考えると良いでしょう。遠景だけや、近景だけでは画面の中に奥行き 感が感じられず単調な画になりがちです。ポイントになる対象物と合わせて見せる工夫は常々 心がけたいテクニックの一つです。
 作例は、2例とも100〜400ミリレンズのワイド端 100mm側での、撮影です。(EOS1D は CCD サイズが 35ミリ判より一回り小さなサイズで、1.25倍の換算で、35ミリ判の画角に相当します :つまり 125mm付近相当と見なせます)完全な広角レンズだと、都市公園の中にある紅葉などを 撮る場合、邪魔なものが多く意気消沈してしまう可能性もあるためと、一つ一つの紅葉の塊が 散漫になり、間が空きすぎる絵になる事をきらい、いわゆる中望遠から望遠域のレンズで 程良い範囲を切り取りつつ、望遠レンズ特質の重なり効果を利用して、紅葉のボリュームを 増してみせる工夫も計算に入れて撮影しました。
 近景がある場合、そこにピントを合わせてしまうと、奥の方まで目が行かなくなりがちです。 アクセントとして綺麗にぼかし、中景で勝負を掛けましょう、遠景はその控えとしてうるさ すぎず、その場の雰囲気を盛り上げるものを見つけだすと良い結果が生まれます。
 このような場合は、それぞれの距離から割りだした、ボケ具合を考慮に入れて絞り値を 決めましょう。あまりパンフォーカスばかりにこだわると、撮影者の狙いがどこにあるのか、 見てもらう人に、的確に伝えることが難しくなってきます。常に撮影時の状況を説明して廻る わけには行かないのですから。写真は写真そのものだけで説明できなければ用を成しません。

ii)近接撮影
作例 1-31:新緑 1(「夏」-「五月雨」-03) 作例 1-32:紅葉 3(「冬」-「紅葉」-44)
作例 1-33:紅葉 4(「冬」-「紅葉」-46) 作例 1-34:紅葉 5(「冬」-「紅葉 2」-05)
共通データ カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm、 絞り:f5.6、絞り優先AE、露出補正:+0.7
 後者のクローズアップ気味に切り取る場合は、絶対に開放絞りでの撮影です。
何よりも美人な被写体(別に美女だけとは限りません。様々な条件から、綺麗に見えるものを ここでは美人と表現しています。:奥深い意味で使っているのですよ…)を見つけることから、 始めて下さい。光線の具合にも気を付けましょう。これ一つで大きく見え方が変わってくる ことは、第5回のところで触れたとおりです。撮影距離が近い分余計に効果の違いがわかり やすいはずです。背景から主題を浮きたたせるためには、背景までの距離を適度に確保し、 先に書いた開放絞りと組み合わせることで、目を見張るような画像が手にはいる はずです。

 作例は主題の色に合わせて、背景の色彩を工夫した例です。
 作例 1-31は、五月雨の中で輝くラクウショウの新緑です。背景にも同色のパステルカラーを 配し、時折雨が降るトップライト気味の雲越しの薄日で撮影しました。垂れんとする雫が ポイントです。
 作例 1-32以降は紅葉ですが、先ずは紅葉と同系統の色彩の中で、選んだ美人の枝を写して います。完全には紅葉が済んでない枝ですが、バックにも緑部分があり、変化に富んだ様が 見えます。天と地に入れた空抜けの白っぽい空間は、敢えて背景が単純になるのを防ぐ意味を 込めてアクセントになるようにと、選んでみました。あたかも右側の世界から左側の領域と しては狭目のゾーンへと腕を伸ばしているような印象もあり、枝の方向性も右上から左下へ ゆっくりと流れるような、心地よいラインを意識して構図も決めました。
 作例 1-33は、墨絵のような中間トーンの中にはっとするような鮮やかな紅葉が入ることで、 静と動を表現しみました。
 作例 1-34は、一変して枝そのものも賑やかですが、影でほとんど潰れた黒い幹と逆光で輝く 淡いグリーン、そして右側には青空と、枝の1本1本毎に、異なった背景の中に入るように、 狙って撮影しています。バックが暗いときが一番逆光の紅葉は輝きが増して見えるのですが 3種のバックの中でも紅葉本来の色彩は変わらないんだよと言う種明かしのような絵になって いるのではないでしょうか。

*運動会やスポーツ行事の撮影
 これはもう、望遠レンズと開放絞り意外の組み合わせはないでしょう。もちろんハイスピード プログラムの設定でも撮れますが、ここは一つ絞り優先で、意識を持ちながら シャッターを…。
 走っているところや、組み体操などの決まりポーズもステキですが、次の順番待ちで緊張の 面もちの横顔や、終わってほっとしている後ろ姿、などという普段目が行かないような、 シーンもフォトジェニックです。常にそういう場所が、陽が当たって条件良いところばかりとは 限りません。シャッターチャンスをものにしたいのならば、感度が高めのフィルムを用意して、 ここぞと言うときに、あわてずに済むよう。絞り値の確認を怠りなく。そして可能なら 人口太陽(ストロボ)の手助けも上手く利用しましょう。

*鳥や昆虫類小動物の撮影
作例 1-35:昆虫 1(オオスカシバ)
  「夏」-「春〜初夏昆虫」-37
作例 1-36:昆虫 2(クマバチ)
  「夏」-「春〜初夏昆虫」-43
カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm、絞り:f5.6、 絞り優先AE、露出補正:+0.7、ストロボ同調
 上のスポーツ撮影に準じますが、マクロ撮影に近いテクニックが必要で、要は 望遠レンズを使って近接撮影をするつもりで取り組むと良いでしょう。

 作例は共に周囲を花で埋め尽くされた空間を、ホバリングしている昆虫で、まさに 「昆虫たちの世界」をテーマに、狙ったカットです。
 花が主題の時には、めしべを、昆虫類や鳥、小動物の場合には、目にピントを合わせる ことが、基本です。じっくりとピントの位置を確認しながら、撮影してみてください。


 ▼マクロ撮影(macro・さつえい)
 マクロとは「大型の」あるいは、「大規模な」という意味の形容詞ですが、この場合は、 「拡大撮影をする」と言う意味として捉えています。ニコンなどは、敢えてマイクロと いう単語をレンズなどにも当てています。接写と同義語として使われていますが、単に 拡大撮影というとフィルム上で 1/10程度以上に大きく写すことを指し、マクロ専用 レンズを用いずとも望遠レンズに中間リングなどを入れても撮影することが できる。

 ▼マイクロ(micro)
 形容詞では「微小な」を、名詞としては「微小なもの」「超ミニスカート」などと言う、 ドキドキしちゃうような単語の意味がある。マイクロ撮影とは、微小なものの撮影という意味。 マクロと対峙する言葉。

 ▼近接撮影(きんせつ・さつえい)
 読んで字のごとし、カメラを近づけて撮影すること。主にはマクロレンズを使うか、レンズの 先端にクローズアップレンズといういわば色調整がなされた凸レンズを フィルターネジ込み部に装着して撮影する。上に書いた中間リングを用いる方法もある。
 マクロ撮影とは、結果として同様な画像を得ることができるので同義語と言える。

 ▼マクロ専用レンズ(………せんよう………):マイクロレンズ
 無限遠から等倍撮影程度までを付属品なしに行うことができるように、作られた専用 レンズで、最近は近接撮影時に増えてくる諸収差を軽減する目的の、フローティング機構 が付いたものが多くなり良好な画質が得られるようになってきている。

 ▼クローズアップ・レンズ(closeup lens)
 レンズ先端のフィルター用ネジ込みを利用してとりつけるアクセサリーで、レンズの焦点 距離により何種類か種類がある。当然焦点距離が短いレンズほど倍率が高くなり、より近接での 撮影ができるようになる。
 虫眼鏡などの凸レンズをとりつけても何とか用は成すが、汎用の虫眼鏡は色収差の補正などが なされていないため、色のにじみや流れなどの悪癖がでて、画質が落ちる。
 もちろん専用のレンズは、それらの処置が施されクリアな像が得られる。
 このレンズを装着すると、ピントを合わせることができる範囲を、近接側にシフトさせる ために、無限遠などの遠くのものにはピントが合わなくなるので、注意を要する。先の中間 リングも付けたままでは同様に遠距離撮影ができなくなる。

 ▼フローティング機構(floating・きこう)
 フロートすなわち、浮遊する機構という意味で、最近のズームレンズ設計を応用した、 レンズ技術で、通常のレンズはピント調整で前群あるいは、一部の焦点調整用レンズを 移動させて合焦させるが、それとは別に、中・近距離域での収差変動と近距離域での像面・ 湾曲の補正を行なう目的のレンズ群を持たせたシステム。
 確か筆者の記憶が間違っていなければ、オリンパスの90mmズイコーマクロレンズが最初に 製品化したはずだが、もうすでにオリンパスは銀塩一眼レフのOMシリーズを生産打ち切り させているため、資料として検索の策もなく詳しく書けない。メーカーとして資料価値は 大いにあるはずなのに、残念である。

 ▼ホバリング(hovering)
 空中停止飛行のこと。ホバー(hover)とは舞う、浮くと言う意味。一部の鳥やトンボなど 昆虫類があたかも空中の一点で羽ばたきながら停止しているかのように、飛翔する状態で。 餌や異性獲得の為に狙いを定める際に行うナンパ中って事かも。