How to

第1章.基礎編(カメラの概要について)   

第8回.適正露出

その3


4.適正露出を得るために その2

図 1-14:プログラム線図
b.プログラムAE撮影

 この図は、某カメラメーカー主力一眼レフ機種の「プログラム線図」を、書いて みました。
レンズは 50ミリ F1.4 を基準に書いてあります。

 ここで。表の左と上に書かれた数字は、前回に出てきた EV値(露出値)の等価ラインを 左上がり 45゚ の線で表示しています。 下側にシャッタースピードを縦軸で表し左端から 1/3 ほどの所にある「1」が1秒をそこから右へ逆数で、1/2、1/4、1/8、……と1/8000秒 まで、左へ実数で 2、4、……30秒まで表示しています。右側には、横軸で絞り値を、 1番下が 1.0 で、上へ 1.4、2、2.8、……と32 まで目盛ってあります。
 左上がり 45゚ の赤いラインが、EV0 の基準ラインです。
 EV0 とは、絞り値 F1.0、シャッタースピード 1秒露出値の明るさという意味です。 シャッタースピードと絞り値の交点が EV0 のライン上で交わるどの組み合わせで撮影しても、 常に同じ露出値になると考えてください。
 一例として、EV12 と露出計で計測されたとすると、この表でブルーの左上がりラインで 表示される斜線が引けます。このライン上の任意のポイント(仮に緑色の○印)から 下のシャッタースピード数値を読むと:1/125秒、右に絞り値を読んで:F5.6 と読めます。 すなわち EV12 の露出値は 1/125秒と F5.6 の組み合わせで得られることになります。 但しこの被写体は前に書いたような特別な条件ではなくて、ごく一般的な平均的反射率の物体と します。ところが、写真の場合適正露出が得られる組み合わせは、それだけでは無いの です。
 ブルーのラインの右下側:1/250秒+F4 でも、左上飛んで1/30秒+F11 でも同様の結果が 得られるのです。
 この表で示される範囲内の倍数系列だけでも、シャッタースピードの遅い順に: (以下秒は省略)
 1/4+F32、1/8+F22、1/15+F16、1/30+F11、1/60+F8、1/125+F5.6、1/250+F4、 1/500+F2.8、1/1000+F2.0、1/2000+F1.4、1/4000+F1.0 と11通りの組み合わせがある ことになります。
 どこかで見覚えのある、組み合わせが並びましたね。そうです、まさに前回出てきた図 1-12 のコップに注水するプログラムと同じ数値ですね。
 これだけ自由度があると、果たしてどの組み合わせで撮影したら良いのだろうかと、迷って しまう人が出てきてしまい、新しいカメラを買ったはいいけど、最初からつまずいてメーカーへ クレームの電話がかかり続けても、困るので考え出されたのが、「プログラムAE」という撮影法 なのです。簡単に言えば、初心者の方が、あるいは経験が浅い方々でも、とりあえずそこそこ 間違いなく写せるようにと、「お助けモード」と言い換えてもいいと思います。

 プログラム線図の読み方(参考までにご覧になる程度で結構です。)
 このカメラの場合は、淡い黄色の破線「ノーマルモード」というのが、「プログラムAE」に 設定した場合の、標準モードの様です。よ〜く表を見ると、暗い方からシャッタースピードが、 1/30までは、開放絞り F1.4 で撮影し、そこから明るくなると、右上がり45゚に上昇して、 絞りが絞られ、1/8000+F22まで上がり続け、最大 EV22 にまで対応することを示します。 1/60 以降も開放値を保ち続ける「開放モード」もこの状態から別途選択できるようです。
 一方の「パンフォーカスモード」に設定すると、1/2 までは F5.6 と F8 の間 約F6.3 位と、 絞り込んだ状態で、そこからは、最小絞りの F22 まで45゚のラインで上り続けます。  その中間に、「風景モード」という設定も、あるという親切さです。

 この表からは、一つの露出値に対して、シャッタースピードと絞り値の組み合わせは、 数多くあると言うことは、理解しておいて下さい。何通りかなどという数字は忘れて いただいて、結構です。

c.絞り優先AE撮影

 この撮影法は、あらかじめ絞り値を想定して、シャッタースピードはカメラ任せにして 撮影する方法で、好みにもよりますが、一番一般的に使い易く応用も利く撮影法です。完全に マスターしてしまいましょう。
 まず、この撮影法を学ぶには、レンズの絞りについての考え方は、理解して臨まないと挫折 してしまいます。ですから基礎編第2回の「レンズの被写界深度」だけは、把握したものと して、話を進めますが、念のためにまとめだけ再記します。

 被写界深度の癖(特質)を不等式で表してみると(「>」で左側が大きいことを示します)

・レンズの焦点距離:     短い>長い
・同じ焦点距離の時の絞り値:大きい>小さい(大きいとは数字が大きい=絞ってあること)
・被写体までの距離:     遠い>近い
・焦点が合っている被写体の: 奥側>手前側
    
*スナップ撮影
 街などで、出会いがしらや、待ちの体勢から、タイミングを見計らって撮影する方法で、 レンズは比較的短めな広角レンズで、ググッと被写体に近づきシャッターを切る関係で、 ある程度絞り込んで被写界深度を利用して、パンフォーカス気味に撮ると、失敗が少ないで しょう。
 先のプログラムモードでも可能ですが、意識の中に現在の絞り値を残しておくという メリットは、とっさの時のマージンとしてあまりあるものです。背景のコントロールや、 前後のボケ具合などもおおよそ掴んでおければ、とっさに絞り値の変更で対応が効きます。
 絞り値:F5.6〜8 程度。あまり絞り込みすぎると、不安定な状態からのシャッターに カメラブレの可能性が高くなるため、避けましょう。フィルムの感度を上げるのも手ですが、 粒状性の問題もつきまといます。

*記念撮影
作例 1-28:記念撮影(少人数)(「冬」-「初冬」-53)
カメラ:EOS1D、レンズ:100〜400mm、絞り:f5.6、
絞り優先AE、露出補正:+0.7、ストロボ同調
 作例は、吹きだまりに集まった落葉の中に半身埋もれて遊んでいる子供達が目にとまり、 保護者の方にお願いして、撮らせていただきました。一声掛けたので、数人のお母さん達と、 背景まで程良い距離の引きがとれる所に回りの落葉を集めて大きな山を作り、 その中へ喜んで子供達が潜ってくれました。
 中位に沈んだ色の背景に逆光で子供達の髪が輝いて、日溜まりの感じが良く出ています。 顔が影になるために、弱くストロボを同調させています。 もちろん忘れずにプリントした写真を後日届けてあげました。

 前のスナップと同じような設定でも構いませんが、比較的大人数を撮る場合と、 少人数の撮影では、撮影する距離が異なってきますので、そのあたりで、景色をどの程度、 雰囲気として写し込むかなどの条件も加味して、絞り値を決めましょう。
 大人数の時は、撮影距離も遠くなりがちです、遠くなると被写界深度は比較的深くなり やすいので開け気味にして、ボケを上手く取り入れないと、背景の中に記念撮影の方々の顔も 埋没してしまいかねません。
 少人数なら、自由に設定できますが、近づいて背景から浮かすか、背景と一緒に表現する手も あります。中途半端な背景と被写体との間が一番いけない見本になります。どちらかに決めて 撮りましょう。