How to

第1章.基礎編(カメラの概要について)   

第4回.光と影


1.写す
作例 1-12:夕陽を受けて輝くカモ
 もっぱら絵描きにより当初は景色や肖像画などを、もっと手軽に入手しようと「暗箱」は、 レンズを得てコンパクトサイズになり。確実に画像が得られるような対策が推し進められ、 今日の姿へと進化してきたわけですが、使う側からの要望はますますエスカレートするばかり で、進化のスピードは留まるところを知りません。
 いわゆる銀塩フィルムを使用するカメラも、35ミリ判サイズでは、国内各社から最高級機が 出揃い。これ以上革新的な機能は望めない今日となっても、カメラに求められる最も根本的な、 要求は変わっていないはずです。
 それは、どんなにカメラが進化を遂げたとしても、光と影からの画像を写し撮るカメラで ある以上、太陽の存在を抜きにしては考えられないのです。
 確かネガフィルムのパッケージには、今でも人物写真を撮影するには… として、「撮影者 は、太陽を背にして立ち、被写体に影が写らないように、注意して撮りましょう」と言うような 説明が書かれていたはずです。ある意味失敗のない写真(肖像画=60点写真)を手に入れようと する場合の最善策とも言えるかも知れませんが、いつもそればかりではつまらないでは、 ありませんか。合格点はもらえても、人にあっと言わせるような、傑作はものにできないはず です。これからは太陽をもっと積極的に利用してみようではありませんか。
作例 1-13:順光で撮影 作例 1-14:真横からの光で撮影 作例 1-15:逆光で撮影
共通データ 100mmレンズ、絞り:2.8、絞り優先AE

2.影

 作例 1-13〜15の画像は、通常太陽との関係で一番身近な接し方3様で撮影してみました。 作例 1-13の順光とは、まさしく先に書いたネガフィルムのパッケージに書かれたとおりに、 写したものです。右の 2例と比べてみても、比較的満遍なく光が当たり、本来の色は一番忠実に 再現できています。いわゆる、的確に被写体を写し取るときには最適な光です。従って「図鑑 写真」と称されることも… 図鑑写真が悪いわけではありませんが、優等生的な絵ばかりが、 ずらりと並んだ写真展に立ち会ったとき、果たしてあなたの心には、ときめきが生まれるで しょうか?
 作例 1-14は、サイドライトによる画像で、右側からの太陽光で右端はハイライトが色飛びも 起こしています。それに引き替え左端は完全に影に埋没し、黒く潰れた状態も見受けられます。 これは直射日光を受けた部分から、完全な影までのいろいろな明るさの箇所が狭い範囲に凝縮 されているからで、劇的な明るさの変化がこの絵のポイントとも言えます。立体感という観点 からは、影の境界線で微妙なラインもくっきりと浮き出て、ものの形を的確に表現できる 光だと言えるでしょう。

 注:この場合、ハイライトに当たる光をより柔らかにする工夫をすれば全体の輝度が 押さえられ、もっと柔らかな雰囲気に撮影することもできますが、光源の具合を分かりやすく 説明するための作例として、敢えて操作をしない状態で撮影しました。
 作例 1-15:いわゆる逆光による作例で、少し難しいかも分かりませんが、後でまた説明する 色かぶりも起こして、全体に緑が強い色彩になっています。
 完全に逆光な為に、被写体の見えている面へは直射日光が、当たっていない状態です。 当然顔の部分も影になりますから露出補正を+1絞りほど掛けています。背景がもっと 明るい状態の場合は、+1.5〜+2位補正が必要になります。
 前の作例と比べて何が異なるのでしょうか?
 シルエットの周辺に輝くラインライトがおわかり頂けるでしょうか? 特にフクロウの背中側と両耳の間頭の上にくっきりと輪郭部分がハイライトに輝いている はずです。
 この逆光の真骨頂はラインライトを得るが為の手法と言っても過言ではありません。 ラインライトが無くて、今の色彩分布の状態だったら、背中部分羽色と背景の木の葉色とが 似通った色彩な為に、被写体が背景に溶け込んでしまい、くっきりと浮き出てはこなくなり、 全く違った印象の画像になっていたはずです。


 ■総合復習
 前回の「ボケ」からの復習として、この作例は 3例とも 100mmレンズで 60cmほどの距離から 撮影しています。背景までの距離は逆光撮影の作例 1-15の状態で約 3mほど、 他の 2例は、約 5m以上離れての撮影なので、結果として綺麗にぼけています。
 このようなトロンとボケた背景を手に入れるためには、なるべく開放絞り付近で撮る必要が ありますが、最低限撮影距離と同じくらいの距離は離してあげないと、綺麗な結果を得る ことはできません。
 短いレンズを使用するときには、なおさらで撮影距離の 2.5 倍から 3倍くらいは、 空きがとれるような工夫が必要になります。

 ▼色かぶり
 いわゆる太陽からの光は無色透明に見えますが、何か色のある物体を反射あるいは透過して 来た光線には、その色の成分が加味されて、次の物体にまで届くことになります。つまり作例 1-14の状態では、全体に緑色っぽく色彩のバランスが偏っています。
 そんな中で特に白いものを撮影した場合、真っ白には表現できずに、色が偏った状態に写って しまい、この状態を色かぶりといいます。
 これを的確に除去して白を再現するためには、偏った光とは補色関係にある色の フィルターをレンズの前に装着して撮る必要があります。多くのファッション系や食材を 撮影するプロカメラマンがシートフィルターを常用するのはそのためなのです。
 ところがデジタルカメラの場合は、ホワイトバランスを手動で調整できる機種もあります。 撮影の条件下で白く表現したいものをテスト撮影して、そのコマの中で、基準の白を指示す れば、色温度を測定して逆に補正できる便利な機能なのです。

 ▼色温度(いろ・おんど)
 難しく理論的に言えば、外部の光を全く反射させない物体を「黒体」と言いますが、この 黒体が高温になったときに放つ光の色と、その時の黒体の温度との関係と見比べて、絶対温度を 基準に数値化した単位です。低い温度では赤味を帯びた色に見え、高温になるにつれて次第に 青白く見えるようになります。
 単位には絶対温度の K(ケルビン)が用いられます。色温度は、これ以上温度が下がらない 絶対零度(約−273゚C)が
0 (ゼロ)K です。
 例えば、太陽の表面温度はおよそ 6000゚Cあります。これを色温度で表すと
  6000゚C+273゚C=6273K
となりますが、地球の大気を通過する内に、青スペクトルが吸収されて、地表付近では、 5600K 前後に見えています。これが日中(午前10時くらいから午後2時頃まで)の 色温度で、午前中のこれより早い時間や、午後遅い時間でも共に、日中より長い距離 大気の中を通過するために多くの青スペクトル分が吸収され、もっと黄色または赤っぽく なってしまいます。ちなみに日の出や日没時の色温度は 2000〜4000K とかなり低い値に まで下がります。
 反対に日陰や曇りの日には、太陽光が遮断され天空からの反射光のみが届くことから青み がかった、色温度が高い状態になるのです。

▼補色(ほしょく)
 色相を表す環の対峙関係にある色の組み合わせのことで、具体的には、ある2色を適度な 割合で混ぜた場合に黒または白になった時、その2色は補色関係にあるといわれる。
 黒になるときは、減法混合といって、絵の具や印刷インクなどの顔料混合をいい、白に なる場合は、RGBを基本色とするような光の混色のことである。

▼シート・フィルター(ゼラチン・フィルター)
 コダック製のゼラチンで作られたシートフィルターが古くからあったために、通称ゼラチン フィルターといわれていたが、富士フイルムがトリアセテート製のものを発売し、需要が多く なったことから現在ではシートフィルターと呼ばれるようになった。
 赤と青みの補正をして色温度のコントロールをするLB(ライト・バランス)フィルターと、 特定の波長を遮断又は透過させることでカラーバランスを整えるCC(カラー・ コンペンセーティング)フィルターがある。