次の日の夜に
思わぬ釣果に、次の日の夜も同じ磯に立っていた。
波は完全に収まり。たまに気がついたように、波がやって来る程度だった。昼間なら完全にお手上げ状態だろう。
あまりに静か過ぎ、逆に不気味さを感じる位だ。
昨日の場所は、全く生命感が感じられなかった。その予感は見事に的中してしまった。
何箇所かポイントを叩いて見たが、全く反応が無かった。フライにちょっかいを出してきたクサフグが鋭いフックの餌食となって、引っ掛かって来ただけだ。
昨日魚が出た場所と良く似た地形の場所を探って見た。しかし、反応が無い。この場所をもう切り上げようとした時だった。
ゴツ!
あーっ、やってしまった。
手前の浅瀬にフライを引っ掛けてしまった。
ラインを軽く張って、フライの位置を確認すると、すぐ近くで引っ掛かっている。フライの在庫が少なかったので、何とか回収しようとロールキャストして見るが、一向に外れてはくれない。
今度は、膝まで水に浸かり、ラインをロッドに完全に収め、竿先でフライを外そうとした。それでも外れない。そんな時に限って波が立て続けにやって来る。
フライの回収jを諦め、竿をまっすぐにしてティペットを切った。
安全な場所まで移動し、ラインを確認しようと竿を見て唖然とした。長さが半分になっているではないか。ロッドティップ部が抜けてしまっていた。
すぐに先ほどの場所に行って見たが、もう竿先を見つける事はできなかった。
もう十年以上使い、愛着のある竿が使えなくなってしまった。そのショックは大きかった。
不思議な出来事
この時期は、ヒラスズキの好期という事もあり、早朝は決まって磯に立っている事が多い。その日もある磯の先端に立っていた。
目的のポイントを数箇所叩き終えた後だった。その日も全く魚の反応は無かった。。
朝日が昇り、オレンジ色に染まったいつもの磯の風景を眺めていた。すると、沖の海面が、突然ざわつき始めた。
最初は、何かが水面下を左にスーッと動いたような三角波が立ったかと思うと、バシャバシャと海面が波立った。
一瞬、サゴシか何かのボイルかと思った。
しかし、次の瞬間、人の頭くらいの大きさの丸い物体が海面から勢い良く飛び出した。その丸い物体には帯のようなものが付いていた。最初は垂直近くに、そして斜めにと連続して飛び上がり、帯に引っ張られるように海面に落ちた。跳ね上がる高さは4〜5m位か?
逆行でシルエットしか分からなかったが、形や動きから、明らかに魚では無いようだ。
何が起こっているのか理解できないままそれを見つめた。少し離れた所には、ふかせ釣り師が数名いたが、自分の釣りに没頭し、全く気付いていない様子だった。結局3〜4回ほど丸いものが飛び上がり、暫く海面が波立っていたが、それ以上何も起こらなかった。
暫く海面を眺めていたが、いつもと変わらない、朝の風景が広がっているだけだった。
そしてまた・・・
その日の午後、僕は少し焦っていたような気がする。魚のライズは何度か見たにもかかわらず、あの月夜以来、ヒラスズキの反応が全く得られないでいた。
今日も朝から磯を叩き続けているのに全く反応が無い。海は沈黙したままだった。
お陰で、いつもの磯を叩き終えたのが、予定より随分と遅くなってしまった。もう潮が随分と上げ始めている。急がないと、次の場所が叩けなくなる。
急いで移動の準備をする。
フライを付けたままラインをリールに巻き込み、ラインを通したままロッドをしまう。そしてロッドケースに無造作に差込んだ。
そのロッドケースの後ろを通った時だった。足に何かが引っ掛かった。
「あれっ!」
太ももを見ると、先ほど仕舞った筈のフライが引っ掛かっていた。そして、フライに付いていたリーダーには、無残にも10cm程の長さになったロッドティップがぶら下がっていた。
あーっ、やってしまった。
慌ててロッドを仕舞ったので、フライがロッドケースから出ていたようだ。後悔したが、後の祭りだった。半月の間に2本のロッドが使えなくなった。さすがに落ち込んでしまった。
2番目のガイドの丁度上で折れていたので、その日はその折れたロッドで釣りを続けた。気分が乗らないまま釣りをした。穂先が折れた竿で釣りをする惨めな釣り人を慰めてくれる心優しい魚は居なかった。
立て続けに起こる不幸な出来事、今思えば本厄がもうすぐ明けるから暫く釣りに行っては行けないという神様からの忠告だったかも知れない。しかし、当時の僕は、厄年であることもすっかり忘れていた位だったので、そんな忠告には全く気付いていなかった。
(続く)
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釣り::回顧録 | 2008/01/23, (Wednesday) 07:39 PM |
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