東日本大震災から3ヶ月余りの頃、無茶々園に参加する地元若手農家の5人が石巻に派遣された。復旧・復興支援とともに、地域人材の経験と育成を目的とした、無茶々園による社会貢献事業である。震災後5ヶ月頃には、同じように若手の農家、漁師、職員らが派遣されている。
私たち第一次隊は1週間の滞在で、主にがれきの片付けをおこない、市民団体による炊き出しに参加する機会も得た。目に映るものや被災当時の話には衝撃がある。帰宅できない被災者の家を狙った空き巣被害の様子など、世相を疑う話も聞いた。
この経験をもとに、私なりの考えを整理してみた。自分が被災したことを想定して、その立場から、災害後は時期によって、次のように分けて考えることができると思う。
○緊急避難期(災害直後〜1週間程度)
とにかく生き延びることを最優先し、総力をあげて集中するとき
○復旧期(災害3日後〜3ヶ月程度)
人間性を取り戻すとき。最低限の生活インフラ、衣食住物資の再確保
○復興期(災害後3ヶ月〜数年)
社会性を取り戻すとき。未来を再構築するまちつくり
私たち住民は、まず避難が癖になるくらいに訓練を徹底することが重要である。紛争地、戦地と違い、自然災害は必ず小康を迎える。緊急避難期を乗り切れば何とかなる、という強い意志と希望を持つ準備が必要だ。 それに対して復興期は、専門家の領域として認識しがちである。しかし復興まちつくりにおける市民ネットワークの担い手は、私たち住民自身にほかならない。
自分の地域の将来像を共有しておくことで、復興の際の基本軸をいち早く得ることができる。行政は住民参加の総合計画の策定や、計画を共有する仕組みのデザ
インにも取り組んでほしい。復興は日々のまちつくりの延長であることを忘れずにいたい。
見逃されがちなのは、復旧期の備えであろう。私たち第一次隊は、ちょうど復興期へ移行していく時期を過ごした。ある福祉事業団事務所の一室を寝床としたのだが、ここは避難所に指定されていたため、毎日、市販のラッピングされたおにぎりやパン、弁当が配給され、レトルト食品も貯えていた。それまでの短くない期間の食生活が、気の毒でならなかった。
復旧期は、被災して精神的にも肉体的にも疲労し傷ついた者が、人間性を取り戻す重要な時期である。より良い復興に向かうためにも、防災や減災、避難場所の確保に加え、復旧から復興への移行期のプログラムも備えておくべきではないか。
西予市は、「本州すっぽり」と言えるほど、多岐の風土を有している。また、昨年の地域づくりグランプリに象徴される、各地区における多彩な市民活動は、
この環境資源を養う潜在能力の高さを示している。この豊かさを避難時にも感じられる姿を描こうではないか。この時代における人間性とは何かを捉え、西予市を見つめ直し、行政、民間、市民による真の公共を獲得する契機になるかもしれない。 |