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こんな来訪者
 先日、ふいになったドアベルにいつもの通りガチャリと出ると、サリーを着た見知らぬ女性が2人立っていました。いや、正確には3人かな。もう一人は後ろのほうにしゃがんでいたからよく見えませんでした。その人たちが「ヒジュラ」だと気づくまで、あまり時間はかかりませんでした。




 ヒジュラとは、インドには古くから存在するアウトカーストで、もともとは子どもが生まれたり、婚礼の場で歌や踊りで祝福をあげる、超越的な力をもった特異な存在です。ウルドゥー語で「半陰陽、両性具有者」(女性器・男性器を併せ持った人)を意味するのだそうですが、先天的にそのような人もいれば、ある時期に自分がヒジュラだと自覚し、去勢をしてヒジュラのコミュニティーに入る人も多いと聞きます。地域によって社会の中でのヒジュラの役割や捉えられ方は様々なようですが、ヒジュラ社会には独特の規律や慣習があること、いかなるカーストにも属さず、男性でも女性でもない第三の姓を持つ者として一生生きていくことは共通しているようです。
「子どもの誕生を祝いにヒジュラは来る」という程度の知識はあったものの、(う)が生まれてから我が家を訪れてくれる近所の人も多いので、この日も最初はまた近所のおばちゃん達かと思い(たいていヒジュラは普段から女装しているのです)「どうぞどうぞ」なんて言って招き入れそうになってしまいました。あれまてよ、と思い一応名前を聞いてみてもなかなか名乗りません。まさか「ヒジュラです」と名乗るとも思えず、向こうからすればこちらがヒジュラと気づいていないとも思っていなかったのでしょう。なんだか様子がおかしいのと、それからドスのきいた声の質やしっかりした肩幅などからヒジュラなのだと分かりました。

 以前東京で観た『ナヴァラサ』という映画や、私がラジャスタン州の村に暮らしていた時に目にした、子が生まれた家にヒジュラの一団がやってきて歌や踊りをがやがやした様子を思い出し、いくらかお金を渡すことになってもきっとそんな風にしてくれるのかと思っていたら、リーダー核のヒジュラが笑いもせずに「11,000ルピー(約3万円弱)ちょうだい、それから服や米も」と言ってきました。その額にも、その唐突さにも驚き、そしてフラットの薄暗い廊下に立つその人たちの異様さが急に気になって、一気に不安になってきました。私の様子がおかしいので、(ゆ)も奥から出てきてくれましたが、そんな大きな額渡せませんと言っても全く帰る気配はありません。ちょっと待ってと言って一度ドアを閉め、内線で大家さんに相談している間も何度も激しくドアベルを鳴らします。
 結局、フラットの管理人のおじさんが来てくれて、もっと小額ですが渡して渋々返ってもらいました。ヒジュラがそこにいる間、怒らせて(う)に呪いの言葉でもかけられたら大変だ!なんてはらはらしていた私も、どこかヒジュラのそんな力を信じているのかもしれないですね。
 後日コルカタの友人にこの話をすると、皆顔をしかめて「あら来ちゃったの、それは大変だったねぇ」と言います。地域によってはヒジュラは神に仕える者として神聖視されたりもするようですが、ここコルカタでは概して蔑まれた厄介者の様に捉えられている印象があります。また、友人の話から、ヒジュラは政府に認められた組合を持っていることや、病院と掛け合って出産した家の住所リストを入手することなどを知りました。
 いやいや、それにしても結局祝福の言葉も何もなく、久々に動揺した体験でした。それから数日後、(ゆ)が昼間買い物に近所に出かけた時に、そのリーダー核のヒジュラを見かけたそうです。「あの時は薄暗くってちょっと怖い感じだったけど、昼間外で見るとなーんか普通のおばちゃんって感じだったよ。」と言います。うーん、もう少し余裕ある対応が出来たら、色々ヒジュラに話を聞けたかもしれないなと今となっては思うものです。

コルカタは秋っ晴れ

(わ)
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