How to

第2章.デジカメ編(カメラの概要について)   

第1回.デジタルカメラ


1.デジカメの生い立ち

 デジタルカメラの歴史について紐解いてみましょう。そもそも原型は約20年前の1981年、 ソニーから磁気記録方式による電子スチルカメラ「マビカ(試作機)」が発表されたことに始まる そうです。(日本カメラ博物館カメラの歴史より抜粋)その「マビカ」は、当時新聞などにも 取り上げられ、興味を持って見ていたのを覚えています。
 ところが市販にはいたらなかったものの、光を電子信号に変換するCCD(電荷結合素子)や 磁気ディスクに画像を記録させるという全く新しい写真システムは大きな話題となり、各社とも 研究・開発を本格的にスタートさせ今日に至っています。
 ですから、デジカメの技術は純粋な日本のアイデア、技術が生み出したものなのです。

 現在では、国内各社及び海外からもデジカメが続々と新発売されて、確か2003年には、 完全にフィルムカメラの販売台数を追い抜いたと記憶しています。わずか20年しか歴史がない デジカメですが、それまでのフィルムカメラでは、ごく一部のマニアを除いて、撮影者が自分で 現像から焼き付けまでの処理をしたりということは、できない話でしたから…。もしできたと してもそれは、現実には暗室という暗い部屋の中での処理で、いろいろな制約がありました。 それに対してデジカメの場合は、明るいところでパソコンを用いて自由に現像からプリント 処理までできる即時性と創造する楽しみを手軽に味わえることから、いわゆるコンパクト カメラ層の顧客を完全に食ってしまった形になっています。
 報道の第一線では、地球上のどこにいても、最新の通信システムを活用すれば、撮影して、 数分もたたない内に全世界へ高画質な画像を配信できるという報道本来の目的と見事に合致し、 今ではほぼ100%無くてはならない存在になっています。
 オリンピックやサッカーワールドカップでのニュース画像は、記憶に新しいことだと思い ます。

2.デジカメの構造

 フィルムに撮影する普通のカメラに対して、デジカメは CCD や CMOS などの受光素子に 露光させて、デジタルメモリーに保存するシステムで。構造的には、生い立ちからしても デジタルビデオカメラに酷似しています。
 また、当然今までのフィルムカメラとも感光体の違いだけを除いて、考え方は延長線上に あり、同列と見なして良いでしょうが、ここ数年携帯電話との融合化が進み、デジカメ独特に 進化している機種も際だってきました。しかしここでは、特殊なデジカメは別に譲るとして、 いわゆるオーソドックスなカメラ型のデジカメについて、触れることにします。
 前章の「カメラの基礎編」で、カメラの一般的な事柄については書きましたので、デジカメ 特有の性質について、触れておきたいと思います。
 さて、一般的な(ネガ)カラーフィルムは、光の三原色(R:赤、G:緑、B:青)を分けて 感光するようにそれぞれにあった感光層をフィルムベースの上に、3層重ねて塗布してあり ます。露光後発色剤によりそれぞれに感光した光の補色に、R(赤)感光層はC(シアン)に、 G(緑)発光層はM(マゼンダ)に、そしてB(青)発光層はY(イエロー)に発色を します。
 一方の撮像素子には、現在の技術ではある特殊な撮像素子を除いて色に対する識別性を 持たせていません。従って素子そのものでは、モノクロの画像しか得られないことになり、 普通の撮影には不向きなので一考を案じてあります。

 図 2-1〜5:撮像素子模式
 前章.第6回適正露出のところで引用した絵の再登場です。
 でも少し細工をしてあります。
縦横3素子からなる、合計9素子の撮像素子までは前回と同様ですが、それぞれの撮像素子の 前に色のフィルターを掛けておきました。そう三原色のRGBです。

これも前回同様にその中心部、ほぼ4素子相当分に露光があったとします。 さてどうなるでしょうか?

ISO100に設定して、撮影すると中央の撮像素子しか反応をしません。 つまり、確実にコンタクトできたものだけを認識さた結果です。
これも同じですが、さてそうなると、この素子セットには、中央にG(緑)感光体しか 無いことになります。

つまり、まあ 半分くらいまで感じたからと許してくれちゃうと…
そうそう感光分布が広がりましたが、G(緑)2素子とB(青)3素子しか気づいて いませんね。

えいやとISO400に設定して、撮影してようやく受光量 1/4 の光にも反応しました。
一部でも、なびかせてくれたのを、恩義に感じて…
やっとこれで、三原色全色が気づいてくれました。めでたしめでたし。
 でも、待ってくださいよ。撮影者は別にこの画像をISO400 などに上げて撮りたくは無い様子 です。それに、もっと小さい画像の場合は、いくら感度を上げても必要な素子の所に光が届か なくて、正確な色情報なんて伝わるはずが無いではありませんか。「う〜ん」と開発者は トイレへ駆け込んだかどうかは、この際別として…… 考えてくれたんです、苦肉の策を。
 その秘策とは、この撮像素子のもう一つ前に、せっかく苦労して集めた光の像を、 ちょっぴりだけぼかす為のローパスフィルター(妙齢な乙女のお顔写真を撮影するときに常用 するソフトフィルターの役目にそっくりです。)を、掛けることにしたのです。
 そうすると、先ほどのどんなに小さな画像が素子の元にこようが、適当にぼかしてくれるので 欲しい素子の所にも画像が来たよと、ショートメールが届くというわけです。(未承認広告では ありません)せっかく高級なレンズを手に入れ、やっとの思いでピントも合わせシャッターを 切ったのに、謀反者は本能寺ならぬ、我がデジカメの中に巣くっていたのです。
 ですから、よ〜く目を擦りながらカタログを見てくださいね。デジカメのカタログで一番の うたい文句は、たいてい画総数表示なんです。日本の場合は、数字ってとかく差別が付けやすい から、すぐ商業ベースで過大に宣伝されるようになるんです。たとえば 300万画素の デジカメだとすれば、RGBそれぞれの画素は100万画素ずつという計算になります。
 カラー印刷は、先ほどのRGBに対して、CMYの三原色が基本色です。それぞれ 補色の関係にあることは前に書きましたが、たったの100万画素ずつしか情報が……
 何となく色ざめてきませんか?
 そして、更に素子の配分は、もっと奥深いことになっているのです。
 ま、それしか方法が無いというのなら仕方がないとあきらめもつくのですが、数年前から実は 彼の国アメリカの「フォビォン」という会社から、画期的な方法でその問題を解決した素子が 開発されたとの報が、舞い込んできました。三原色が素子の中を浸透することができる深度の 差を匠に読み込むことでRGBそれぞれの色情報を取り出す仕組みですが、上手くゆけば実効 3倍の画素数の撮像素子と同等と言うことになるらしいのです。魔法の玉手箱のような話です が、まだ素子そのものの大きさはそんなに大きくはないようです。しかも早速日本でもその素子 搭載のカメラが一社表れだしたのです。マニアの間では今後の注目株筆頭ですが、既存のカメラ メーカーさんは、なかなか海外のそういう素子は…?
 ユーザーは望んでいるのですが… ねえ。


▼CMY
 光の三原色(RGB:赤、緑、青)に対して補色関係にある塗料系の三原色のこと。
デジタルデータの場合、相互に変換は可能だが、完全に変換することは難しく、無彩色の 黒の含有量などにより微妙に色相のズレなどが生じるために、1往復させた場合完全に元に戻る ことは、あり得ない。
  三原色の補色関係
 C ←→ R = Y + M  シアンと赤は補色関係にあり
 M ←→ G = Y + C  赤は黄色とマゼンダで作られる
 Y ←→ B = M + C  ことを表しています。

▼無彩色(むさいしょく)
 有彩色に対する言葉で、いわゆる白からグレーを経由して、黒までの色味を持たない色で。 明度情報でのみ表すことができる色のこと。

▼明度(めいど)
 色を表す三属性(色相、明度、彩度)の一つで、濃度を表す。

▼色相(しきそう)
 色の属性の一つで、つまり赤(R)とか青(B)、緑(G)の色味とでも言えばいいでしょうか?
昔から色を表す方法としてマンセル表色系が使われていましたが、この場合、0〜10 までの段階表示で明度を、最後に 0〜14で彩度を表し3つの要素の組み合わせとして識別 します。

▼彩度(さいど)
 色の三属性の表現法で、色の鮮やかさ、または色の飽和度を表す。完全に混じりっ気のない 純色がもっとも彩度の高い色となる。

▼マンセル表色系(ひょう・しょくけい)
 アメリカの画家で美術講師でもあったアルパート・H・マンセル(1858〜1918年)が創案し、 1905年に発表した色表示の体系です。その後アメリカ光学会(OSA)の測色委員会が科学的な 種々の検討を加えて大戦中(!)の1943年に修正マンセル表色系を発表し、現在のマンセル 表色系となっている。JIS標準色表は、この修正マンセルをそのまま物体色の表色系として 採用している。
 色相(アルファベットと数字の組み合わせ記号) 明度(数字)/彩度(数字)で全色を 表し、たとえばこの「How to」ページのベース色は「7.5Y8/3」近似色として捉えます。ここで 近似としたのは、色票の間隔がかなり空いているため、中間の色域は推定で判断せざるを得ず、 推定精度には観察者による癖などにも左右され低くなる欠点があるからです。
 この場合、色相は R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(緑)、P(紫)の 5色相を基に、その中間色の YR、GY、BG、PB、RP の 5色を加えて10色相が基本となり識別する。
 明度は最高濃度の黒を「0」とし、「10」の白まで 10段階で、一方の彩度はグレーに近い 濁ったものを「0」から「14」へと(色相により最高彩度は異なります)分布させます。
 また黒から白に至るグレー色は「N8.5」のように「N:neutoral」+明度表示のみで 表します。
 近年はデジタル表記が進むなかでカラーテーブルという表記法が広く用いられる ようになった。

▼カラーテーブル(color table)
 bgcolor とも言われる。デジタルならではの表記法で、6桁 16進法(0〜F)の数値で 表す。最初の 2桁が赤(R)、中 2桁が緑(G)、後の 2桁が青(B)を表し数字が大きくなるほど その三原色の度合いが増すという仕組みです。0が最小で、Fが最大になりますから、黒は 「#000000」 、白は 「#FFFFFF」 という事になります。
 同じく赤は 「#FF0000」 ですし、 「#00FF00」 は緑を、 「#0000FF」 が青を表します。
 従って各色毎に 16X16=256色の階調を表せ、この三原色を掛け合わせて色を表現するため、 256X256X256=16,777,216(2の32乗)色が表現できることになります。
 これをデジタル上で32ビット表示と呼びます。
 また、16ビットとは 65,536色表示識別が可能という事を表します。
 ちなみに先ほど同様「How to」のベース色は 「#CCCC66」 で表されます。

◆撮像素子色の配分
 計算上は、上に書いたような配分が妥当だと思われるのですが、実際に人間が感じる光は 緑色を多く感じる癖があり、また素子にフィルターを掛けた感光癖もその傾向があることから、 より自然に見せるために、実際には緑感光素子を 1/2、赤と青を 1/4 ずつという配分になって います。