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第1章.基礎編(カメラの概要について)   

第1回.カメラとレンズ


1.レンズとは
図 1-1:虫眼鏡など凸レンズの概念図
 小学校理科の授業を思い出してください。レンズには大きく分けて、回りから中心に行くに 従って厚さが増してくる「凸レンズ」と、逆に薄くなっていく「凹レンズ」の 2種類があり ます。
 主にカメラ用のレンズとしては、「凸レンズ」が主体となりますが、後から出てくるレンズに 伴う悪い癖を押さえ込んだり、レンズの主点(マスターレンズの位置)操作の為に、 やむを得ず全体としては「凸レンズ」の働きをもたせはするものの、組み合わせの中に「凹 レンズ」を組み込む必要性もでてきます。
 無限遠に近いところからの光(たとえば太陽光)は、ほぼ平行な状態で私たちの所に到達し ます。途中に「凸レンズ(虫眼鏡)」を置いてあげると、レンズを通過した光線は、その レンズ固有の焦点で 1点に集められます。これは皆さんお馴染みですよね。ここでそのレンズ から 1点に集められた箇所までの長さを、「凸レンズの焦点距離」と呼びます。
図 1-2:凹レンズの概念図
 無限遠以外のもう少し近い位置からの光はレンズを通過した後、必ず焦点面よりも レンズから遠ざかった位置で交わります。
 一方の凹レンズの模式図が図 1-2です。こちらは無限遠からの光線が、このレンズを通過 することであたかも 1点から放散されたかのように分散する特質を持っています。その 1点を 虚焦点と呼びレンズからその点までの長さを「凹レンズの焦点距離」と呼びます。

2.カメラとは

 カメラとは、先ほどの虫眼鏡をレンズに、焦点面にフィルムや撮像素子を置いた暗箱の ことです。
 もっと歴史的に眺めてみると、そもそも語源は、11世紀頃まで遡ると言われています。
 かの有名な
レオナルド・ダ・ビンチ もメモに残しているそうです。
 その当時のカメラとは「カメラ・オブスキュラ」ラテン語で「暗い部屋」という意味の 言葉です。ピンホールを通して、暗い部屋の中に太陽光線を導くと、目を痛めずに、 太陽の姿を壁などに映し出すことができるという天体観測の技法だったようです。
 これでは、今の形と大きさからは、おおきくかけ離れすぎていますよね。
 16世紀になるとピンホールの変わりに、凸レンズを用いることを思いつき、17世紀に なって持ち運びが可能な暗箱ができるようになり、小型化に拍車が掛かったことは言うまでも ありません。しかし、この時代の「カメラ・オブスキュラ」は、もっぱら画家達の御用達で、 焦点面をすりガラスにしてあてがった紙に主に風景などの投影画を写し取っていたよう です。
 19世紀になって、フランスの画家
ルイ・ダゲール によって、投影画像をヨウ化銀と光の 反応作用を利用して、固着化させることに成功し、晴れて写真としての暗箱「ダゲレオ・ タイプ」の「カメラ・オブスキュラ」が日の目を見ることとなります。1839年のことで、 今からたった 165年前のことです。
 当時の暗箱は、名のごとく単なる木製の光漏れがないように目張りされた四角い箱だったの ですが、その後度重なる改良が施され、機械式のシャッターが付き、絞りの働きをする遮蔽窓 から、露出を機械制御へ、やがては電気的に調整できるようになり。今では当たり前になった、 ピントを自動で合わせてくれるオートフォーカスまでが付いた、単なる暗箱からは、雲泥の 差といえる現代カメラへと進化して来たのです。
 ところで、我が国では 
杉田玄白 らによって「暗室写真鏡」や「写真鏡」という名で紹介されて います。写し撮るという概念が、鏡という漢字を用いたことでも良く表れていると 思いませんか?
 ちなみに「写真」という言葉ですが。この中には「真」すなわち真心を的確に写すという 意味が込められているようです。特にお隣中国では、「写真」とは、肖像画の意味だそう です。

▼焦点面(しょうてん・めん)
 レンズの光軸に直行するレンズの焦点位置にある面のことで、カメラなどの場合は、 この位置にフィルムや撮像素子をセットします。

▼光軸(こうじく)
 レンズ面に直行する線の中で、特にレンズの中心を通るものを表わします。

▼虚焦点(きょ・しょうてん)
 凹レンズや凸面鏡の焦点を表す言葉で、凸レンズや凹面鏡のように、実点として確認は できないものの、あたかも凹レンズ(凸面鏡)を通過して以降の光線がこの点から発せられ たかのような線を描くことから「虚ろな焦点」を意味します。反対に凸レンズなどの焦点を 「実焦点」と呼ぶ場合もあります。

▼ピンホール(pin hole)
 針で開けた小さな穴という意味ですが。この場合丸い穴でないといけません。ちなみに 四角い穴のピンホールで画像を映し出すと、ぼけた部分に四角の連続画像が浮かび上がり、 画面が煩くなり素直な絵にはなりません。そもそも、光の屈折現象を利用して 結像させていますから、屈折させる箇所に癖のあるものを用いるとその癖が灰汁と なっていつまでも鼻につくことになりますから注意が必要です。
 ピンホールによる光の屈折は、レンズなどを通過した場合とは異なり、質量が大きいものの 近くを相対的に質量が非常に小さなものが通過する際に大質量から影響を受けて曲げられて しまう現象で、重力レンズとも呼ばれています。「繁華街を通ったお姉さんが、 質量の大きなお兄さんからナンパされちゃう」とか、「会社帰りのサラリーマンが赤提灯に 暖簾の重力誘惑についふらふらと…」と似たような事と言えばおわかり頂けますか。
 この場合の癖が後から出てくる、レンズの滲みや収差などと呼ばれるものです。この解説は 後々触れてゆきます。
 また、穴の直径は小さければ小さいほど像はシャープなものとなりますが、反面レンズの 絞り値と同様暗くなり、反対に径が大きくなると明るくはなりますが、重力レンズの影響は 光を遮蔽する物質と空いた穴の至近部分にのみ影響が出て起きる現象なので中央部に行くに従い 素通し状態となりぼやけてきます。また直径分ずれた像がぐるりと穴の形状に類似した形に 展開する羽目となり、結果鮮明な画像を得ることはできません。

▼屈折現象(くっせつ・げんしょう)
 光に限らず波が、密度や性質が異なる物質の中を透過する際には、その物質の内外で 屈折率の違いにより一定方向へと歪められる性質があります。お風呂に脚をそっと 差し入れた時に、あなたの脚が水面を境にぐにゃっと折れたように見えるあれですよ。
 図 1-1に例として書いた平行光線が凸レンズにより 1点で交わるように見えることも、この 屈折現象によってなされる現象です。ですから図で用いた光は、左方向からレンズに入った 境界面で一度曲げられ、そして再び空中に飛び出す際にもう一度と都合 2回歪められた結果 あの図の様に焦点で結像するのです。

▼結像(けつぞう)
 レンズなどの力により光が集まり像ができること。

▼重力レンズ(じゅうりょく・lens)
 一般相対性理論によれば重力により空間が歪められたり、それに伴って光も影響を受け空間に 沿って曲がって進む。その光が曲げられる事により起きる現象があたかもレンズを通過して 起こったかのように見えることから、この名前が付けられた。非常に微細な現象なので、 通常は観測の邪魔者として扱われる事が多い。
 天体望遠鏡の高精度なものなどの場合にこの影響が表れて来るらしい。たとえばNASAにより 宇宙空間へ打ち上げられて現在稼働中のハッブル天体望遠鏡などでは、重要な問題となっている らしい。

▼屈折率(くっせつ・りつ)
 真空中の光速度と媒質中の光速度との比。<広辞苑>
 その素材が光をどれだけ屈折させる能力があるかを示す、その素材固有の値で、屈折率の 大きな素材ほど大きく曲げることができ、眼鏡用レンズの場合は薄くできる。

▼実像(じつぞう)
 凸レンズや凸面鏡あるいはピンホールなどにより実体として見ることができる像のこと。 反対に虚像(きょぞう)は理論上できるとされる像で活用する事ができず通常は見ることが できない。