カメラストラップ

どんな革が良いのでしょう?


fig.01 牛革片面の部位名 fig.02 捌いた牛革を背から
    見た部位名
fig.03 ベンズ部位のストラップ fig.04 ショルダー部位のパーツ

カメラストラップ用 革を選ぶと…

 前章では、少し難しい革の生成方について聞きかじりを、文章にしてみました。
そんなことはどうでも良い、それでは一体どんな革が、ストラップに適しているでしょうか?
 写真撮影することは、数ある趣味の一つという方が多いことでしょう。即ち自己満足が優先される娯楽の一作業です。
趣味性が高いからこそ、用いる素材にも遊び心が入り込む余地があるとも言えるでしょう。
ここまで来て初めて、革の入る余地が見つかりましたね。

 革らしい革とは、真っ先に思い浮べる革とは一体どんな革でしょうか?
固いという印象、若しくは、柔らかな印象でしょうか?  丈夫さからは、牛革の部位から選び出す場合、ベリー部という腹の革は、柔軟性に富みますが床面(裏面)もラフで、伸び代も多く扱いにくい部位です。極端なベリー部位は避けた方が良さそうです。
逆に言えば、それ以外の部位なら、極端に厚すぎ(4ミリ以上)たり、薄すぎ(1.3ミリ以下)たりしない限りは、充分使える範囲だと思います。もちろん物理的な傷などのダメージがある場合は別ですが。


fig.06 捌いた牛革を背から
    見た部位名
fig.07 部位見本画像
 上段:ショルダー部位で作ったストラップ
 中段:ショルダー部の革
 下段:ベンズ部の革(比較)

fig.08 クロム鞣しスムース革の例 fig.09 コンビ鞣しによりナチュラルな
    皺を活かした革の例
fig.10 部位見本画像
 上段:ショルダー部で作った
    ストラップ
 中段:ショルダー部の革
 下段:ベンズ部の革(比較)
fig.11 タンニン鞣し半艶シュリンク革の例 fig.12 タンニン鞣し艶消し革の例 fig.13 コンビ鞣しシュリンク(茶系)革の例

革の部位毎の特徴について

  ショルダー(肩):

 柔軟性と強度を兼ね備えた部位です。元々、頻繁に動かしていた箇所と言うこともあり表面にシワが多く、柔軟性がある革です。ベンズと比べると繊維が太く密度が粗め、革の厚みは薄めで傷も多いですがトラといわれる首周辺のシワが特徴で、そのシワを敢てデザインとして取り入れる場合もあります。
 良くも悪くも、癖の強い部位です。デザイン的には fig.05 の画像でお分りの通り、縦中央に見えるシワのラインが、背骨の位置に当り、左右がそれぞれ振分けになっていて、上段のストラップ例は、Aquirax 用に制作した製品で、画像上側に何とも言えないカットワークは、ショルダー部の革を入手する際 fig.02 画像のショルダーと書かれた左右一体となった「ダブルショルダー」という名称で入手するを手に入れています。実はこのセンター(背骨に当る箇所)が、シワの特徴でもありこれがないと、単なるシワ付の革(シュリンク)と何ら区別がつかないのです。
 革取りの際に、この背骨ラインを意識して左右に振分けるサイズで切りだすと、カメラ用のストラップとしては、最高の製品になること間違い無しといえます。
 そして、このカーブは革フェチが極まった、タンナーさんが鞣し前の段階で、原皮を選別しダブルショルダー用として出荷しようと決めた際に、牛1頭分を一体として様々な加工をするには、オーバーサイズのために、出荷製品毎にプレカットを行う必要があるのです。この当にプレカットラインをそのまま活かして作り上げています。完全に自己満足でしょうが。このラインこそ、タンナーさんの渾身の一刀が息づいていると感じています。

 多少我々のラインとは異なるとはいえ、牛さんの肩から首にかけてのラインを遺伝子的も備えた部位のため、製作する革とすれば、やっかいなことがあります。タンナーさんが革として製品化する際に、表面にうねりのあるモノは、売りにくいため出荷前に平面に見えるようプレスを掛けてから出荷しているのですが、空気中の湿気を吸って、すこしずつ元々の遺伝子が持つカーブへと先祖返りをしたがります。ですからこの部位で平らな製品を作ろうとしても、必ず反りが生れ台無しになることも… やはり本来の持つ性格を的確に読取る必要があると言うことでしょう。そう言う意味では、カメラ用のストラップにすることは、とても理に叶った加工だと思います。
事実 Aquirax も自分用にと20本近くストラップを拵えてきましたが、使っていて一番身体に馴染むのはこのショルダー部位で仕立てた製品と実感しています。
 製品化して使いはじめると、使う人の汗なども吸ってますます自由に伸び始めます。(伸びると言っても数センチ単位で伸びるほどではなりませんが)、徐々にどちらかの辺が片伸びします。多分伸びる辺が背中に近い方だと思いますが…
ですから、片伸びしそうな側を背中側になるようカメラにセットできると、馴染も良くなります。

 Aquirax は、常用として巾7センチの市販品からしたら15センチほど長めに誂えたストラップを遣っていますが、カメラを首から提げて小走りになるときなどに、必要以上にストラップがバタ付かないのです。これはショルダー部位の隠れた特徴(馴染の良さ)だと思っています。
 先に書いたように、背骨ラインを振分けて革取りすると、実は切出し本数も減ってしまって、とても無駄の多い革取りになり、また Aquirax が仕入れる問屋さんでも、そんなに数多く出回る物でもないため、同じ面積として革取りするにもかかわらず、どうしても割高にならざるを得ない実情があります。(お手頃価格でのストラップからすれば、倍くらいが目安になります)


  ベンズ(背中、腰):

 接ぎの無い1枚革のベルトが作成できる部位はこの部位に限られます。部位自体繊維密度が高く、厚みもあり非常に丈夫な素材で、歪み・伸びなどにも強い部分なので、強度や耐久性もとても高い部位です。
 革としては、優等生といえる部位です。欠点を見いだすのが困難とも言えますが、優等生が故に特段癖もなく、趣味性の観点からすると、つまらないとも言えるかも、そう感じるようになったなら、あなたは革フェチ入門資格者かも?
最初に入手するなら、間違い無し、これがお薦めでしょう。悪い点を言うとすれば、緻密な革のため、他の部位と比べると単位質量が大きく、重みを感じることくらいでしょうか?
 でも、丈夫さや耐久性を考えれば、大切なカメラを支えてくれるストラップです。これらの長所を無視するわけには行きません。これにしておきましょう。


  バット(尻):

 「ショルダー」よりもシワが少なく、特にコシがある部位です。強度もあり牛革を含め他素材でも良質な革素材として扱われている部位です。なかでも、馬革におけるこの部位は、「コードバン」と呼ばれて高級素材として扱われています。
 カメラ用ストラップとして見ると。ちょっとオーバークオリティとも思える革種でしょう。コシが強い=本質的に固い皮と言えます。やはりストラップとして遣う場合は、硬めよりもしなやかさを重視したいからです。馬具のサドル用としては最適と言えます。


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