革について

「皮」から「革」へ


牛革片面の部位名

捌いた牛革を背から見た部位名


革について

 このページでは、革について書くことにします。Aquirax は、いわゆるタンナーという革の加工業者でもありませんし、 革製品の製造業者でもありませんが、自分で写真撮影をするときのアクセサリーに、大好きな革を遣いたいという 要求から、また自分好みの商品が見つからない苛立たしさから、自ら手作りでいろんなモノを作ってしまおうと、 トライアンドエラー、試行錯誤した結果、今日に至っていて、経験から学んだ事柄も 折角なので、反面教師としてでも、 学んでいただけたらと作っています。
 革と一口に言っても、種類も多く漠然と全てに触れる知識もありませんので、主にカメラ用ストラップとして、 一般的な牛革について触れる事にします。

「皮」から「革」へ

 日本で遣われる革は、ほとんどが海外からの輸入品です。豚だけがほぼ100%国内産で賄われていると言えるそうです。 牛の場合でも、国内生産量で賄える量は、輸入量の1/4以下なんですって、ほぼ欧米からの輸入に頼っているわけです。 海外から輸入される原皮は、塩漬若しくは乾燥処理された状態で入ってきます。共に移送中に腐敗してしまわないよう 処理が為されて、加工業者(タンナー)さんの元に届くわけです。

 タンナーさんは、このあと以下の工程を踏んで鞣しの前作業にします。
・「水戻し」:水洗いにより塩分と不純物等も流し落す工程
・「裏打ち」:裏面(床面)に付いている肉や脂肪分を除去する工程
・「石灰液漬け」:強アルカリ液中に浸し、コラーゲン繊維をほぐす工程、表面(銀面)の毛などの除去
・「荒剥き」:目的に応じた厚さに分割、若しくは剥く工程
・「垢出し」:こびりついた不純物を機械や刃物を遣い取除く工程
・「石灰液漬け」:厚み分割などにより絡まったコラーゲン繊維をほぐす工程
・「石灰除去」:再び水洗いで石灰分を完全に除去する工程、これにより銀面の滑らかな質感確保させる
・「酸性溶液漬け」:薬品処理のクロム鞣しで行う工程で、これにより鞣し剤の吸収を助ける作用

 前作業を終えて、いよいよ鞣しの工程に入ります。
「革」偏に「柔らかい」と書いて鞣しという字です。つまりは、皮を柔らかくする工程のことです。
具体的には、そのままでは腐敗したり、水分が抜け硬くなってしまう「皮」のコラーゲン繊維に鞣し剤を結合させ、安定した素材「革」に変化させること。そうすることから、劣化を抑えながら、素材としての柔らかさや強度を生むための工程です。 現在、植物(ミモザなど)から抽出した渋(
タンニン)と、クロム化合物(塩基性硫酸クロム塩)が主流となっているそうです。


(ベジタブル)タンニン鞣し
 昔ながらの手間のかかる製法で完成する堅牢で味わい深い素材となる。略してベジタンレザーとも呼ぶ。
植物(ベジタブル)主にミモザ、チェスナットなど植物の樹皮から抽出した渋(タンニン)でなめした革の総称で、 古くから行われてきたなめし法。タンニンは皮への浸透が遅いため、時間が掛かるが、型崩れしにくい特徴を持つ。
 茶褐色で、光により暗色化しやすい傾向を持つ。即ち革が育つプロセスを楽しめる。
低pHでは淡色、高pHでは濃色となる。
堅牢で磨耗に強く、伸びが小さい。可塑性が高く、成形性が良い。比重は比較的大きく、耐久性に劣る。ヌメ革ともいう。

■鞣し方:ドラム槽(大きな樽)の中にタンニン液を入れて強制的に革に叩き込む方法(通称「タイコ」)と、濃度の違うタンニン液を入れたピット槽(プール状の水槽)に低濃度から徐々に高濃度の槽へと段階を追ってじっくり漬け込む方法(通称「ピット漬け」)の2種がある。

■特徴: 30以上の工程で平均1カ月以上かかるため、時間(クロムなめしの約2倍以上)もコストもかかる。天然の成分のみで芯まで時間をかけて鞣すため、革に負荷がかからない。
鞣し直後の状態は、革の切り口は茶(黄)褐色。ちなみに、「バケッタ製法」もフルタンの中の一つの製法。
堅牢で摩耗に強く、革自体が伸びにくいため型崩れしにくい。反面吸湿性に富む。
使用を重ねるうちに艶や風合いが増す。一般で言われる「革の匂い」とは、このタンニンの匂い。

■特質: ナチュラルな仕上げで使用を重ねるうちに色艶や形に変化が生まれるため愛好家に根強い人気。



クロム鞣し
 化学薬品であるクロム化合物(塩基性硫酸クロム塩)を用いて行う鞣し方で、時間と手間がかからず低コスト。
染色や仕上げ加工をおこなう前までは、一様に青く、この状態をウエットブルーと呼ぶ。
特徴としては、切り口が青白色、柔軟性・弾力性・抗張力・耐久性・染色性に優れる。
吸水性が低く、水をはじきやすい。
発色がはっきりとしていて、比較的熱に強い。
 クロム鞣しは100年ほど前に開発された画期的な鞣し方で、現在流通している革の90%を占めていたが、焼却時に有害な6価クロムを発生させたり、クロム排水問題など、環境に対する影響が懸念されている。

■鞣し方:ドラム槽(大きな樽)の中にクロム液を入れて強制的に革に叩き込む方法(通称「タイコ」)が主流。

■特徴:金属鞣しの一種。フルタンと比べ、鞣す時間がかなり短いため経済性に優れる。
革の切り口はクロム塩の青色。「ウェットブルー」と呼ばれる。
最も広く行われているなめし法で、世界の革の約8割はクロム鞣し製法によるもの。

■特質:柔軟性と弾力性、耐熱性に富み、発色が良い。伸縮性が良く比較的軽い。
衣服や工業製品まで幅広い用途に使用される。
しなやかで柔らかく、またドレープなどの作りに適しているため女性鞄などにに人気がある。



その他の鞣し
混合鞣し(コンビネーション鞣し:ヘビータン鞣し=ヘビタン鞣し)

 名前の通り、まずクロム剤で鞣し、再鞣しに植物タンニンまたは合成タンニン剤を使用して、鞣された革をいう。
特に型押し革はクロム鞣しだけでは型抜けが起きやすいので、一般に再鞣しにタンニン剤を使用し、型抜けを防止する。
 革の性質は、クロムなめし革とタンニンなめし革の中間の性質を持ち、両なめし革の欠点を補っていて、タンニン鞣しのような風合いの革を低コストで生産できる。


油鞣し
 魚油を用い、アルデヒドとの複合なめしで行われることが多い。非常に柔軟で、吸水性が良く、適度の親油性を持つ 洗濯も可能。
自動車・レンズ・貴金属等の汚れ落し、ガソリンの濾過などに使われるセーム革が有名。


アルデヒド鞣し
 化学物質であるアルデヒド化合物による鞣しで、クロムを用いない環境にやさしい鞣し方法として注目されている。 コストはやや高め。


白鞣し
 姫路白鞣し革、姫路革、姫路靼(ひめじたん)といい、古くは白靼(はくたん)、古志靼(こしたん)、越し靼(こしたん)、播州靼(ばんしゅうたん)といわれた。印伝革とともに古い歴史を持つ日本独特の革。
 塩漬けされた原皮から、川づけ、脱毛、塩入れ、ナタネ油による油入れなどの行程を経て、天日乾燥と足揉みを繰り返して仕上げる。
淡黄色を帯びた白い革で、古くは武道具に用いられたが、揉みシボを生かして財布、ぞうり、バッグ類、書類箱などに加工され姫路の特産品となった。



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