鳥からの贈り物コレクションギャラリーです。

フクロウ 雄幼鳥の羽根



2枚とも巣立ち後1カ月頃の画像です。

羽根画像は原寸のほぼ50%です。

  L:165mm
 10枚ある初列風切の一番外側の羽根です。フクロウの仲間は夜間狩りをする際に羽音を立てずに飛べるようにと、 画像の左側(外弁側:羽根を閉じた際に外側に見える側)縁に櫛状の羽根と内弁側には細かな毛を付けており、 とても柔らかくなっています。内外弁共に欠刻(羽根の切り込み)も猛禽類と同様に持ち合わせています。 暗褐色の縞の付き方は、個体差でいろいろなバリエーションがあり、個体識別が可能なほどです。逆に言えば、 同じ個体は、毎年羽根が生え替わっても、特別な事情が無い限り同じパターンの縞模様を持ち続けるという 意味です。

  L:245mm
 こちらも初列風切で内側から6枚目( Pr-6 と略して呼ぶこともあります)で、風切中では最大の羽根です。 外弁(画像左側)の欠刻の箇所が「A」の羽根とは異なっていることがおわかりでしょうか?

  L:200mm
 次列風切です。初列風切とは羽軸から左右弁幅のバランスで見分けます。初列の外側に行くほど、外弁の幅が 狭くなります。逆に羽軸の根元に保温のためと思われる羽糸(ふわふわした産毛の様な毛)を持っています。 これは、飛行の際に空気の抵抗を増やし、羽音を立てる原因にもなりますから。上下の雨覆が沢山集まっている 部位(翼の根元側)にのみ風切には付いています。



  L:250mm
 中央尾羽で、右のE(最右端尾羽)に比べて明瞭な縞模様はありません。もしも後ろ側からフクロウを観察 出来るチャンスがあったら、是非注意して見てください。一般的には風切羽根の下にこの中央尾羽が見えます。 風切もそうですが、翼を閉じている鳥は以外に地味な模様に見えます。林にしろ草原にしろ休息している彼らは、 安息を求めるはずですから、周りの景色に溶け込む柄の方が、有利なのでしょう。これも前記の通り個体により、 微妙に模様が異なります。

  L:210mm
 12枚の尾羽中最右端の尾羽なのは前に書いたとおりです。注意して見ていただきたいのは、羽軸(羽根中央の 軸で羽弁が両側に付いている部分)と羽柄(同上 羽弁の付かない箇所)のカーブの仕方です。風切は全体として 彼らのボディラインに沿って緩やかなカーブを描いています。専門的にはその曲率を見ることでおおよその鳥の スタイルや大きさを想像できます。外弁はその曲線の外側についていますので、外弁と羽柄の位置関係で体の 右に生えていたのか逆なのかも分かるという仕組みです。尾羽の場合は、羽軸の箇所は比較的直線的に伸びていて 羽柄だけが大きく曲がっているのが最大の特徴です。胴体の最後尾の狭い箇所から生えてほぼ12枚の羽根を並行に 並べるためには、羽柄はこのように曲がらざるを得なかったのでしょう。その努力にはただただ、脱帽です。 模様は、風切同様何となく一連の個体によるパターンがあるようです。

  L:70mm
 このちっぽけな羽根はどこの部位のものか分かりますか?トップ左画像できれいに並んだ風切の上からちょこんと 顔を出している、尾羽です。フクロウの場合孵化してから巣立ちまでにたっぷりと1カ月ほど、狭い洞の中での 生活を強いられます。巣の中では風切も尾羽も邪魔にこそなれ必要はありません。体温維持のための羽毛があれば 充分です。従って巣立ちの頃には、風切も尾羽も鞘(さや)という白い保護材に覆われて出てきますが、その後 急速にそれらが成長し始め産毛も抜け替わり、成鳥の羽根へと変わってゆきます。そんな成長の過程で抜け落ちた 羽根なのです。基部に白い鞘が付いたままなのがおわかり頂けますか?

  L:70〜100mm 3枚
 今までの説明と矛盾した羽柄から羽軸の曲線にお気づきの方は、プロ(何のプロなんだい…?)はだしですね。 下2枚が特にS字を描いて、何ともセクシーと、思えるのは 私が異常なのでしょうか? 種明かしは、小翼羽という羽根です。人間にたとえると、鳥の翼は手に相当します。初列風切は掌骨という手首から 指先(第2指と第3指)についています。次列風切が肘から手首までの尺骨、そして三列風切が肘から脇の上腕骨に ついています。この小翼羽は第1指(つまり親指)について力強く他の風切とは違った動きで、微妙な風を操作する 働きをしているようです。羽軸の曲がり具合もその働きに合わせて、奇妙なカーブを描き、弁のサイズの割には 太い羽軸になっています。  私が鳥の羽根に興味を持ったきっかけが実は、フィールドでキジバトの小翼羽を拾ってからなのです。  これまでの羽根はFを除いて、一見成鳥の羽根とは外見上では区別が付きにくいものばかりでしたが、実は 羽軸の肉厚が成鳥とは異なりとても薄くて、もろい羽根なのです。ですから、初年度に抜けた羽根は貴重なもので 次年度以降の羽根は、毎年同じ状態のものが生え替わりますが、初年度のそれは…



  L:90mm
 ここからは幼鳥の時にしか、生えない羽根たちです。まずは背中に生える羽根です。羽軸がまっすぐなのは、 その中でも中央寄りに生えていた証です。風を制御するこれまでの羽根とは根本的に異なり、体温維持と 風の抵抗を少なくする働きから、羽軸も比較的細く、体に馴染みやすくなっています。

  L:85mm
 胸回りの羽根です。幼鳥時代のみこの比較的細かな横縞模様が有り、これが幼羽最大の特徴です。これが 抜け替わると、成鳥と同じ柄の羽根になってしまいます。

  L:85〜90mm 2枚
 小雨覆という、風切のカバーの役割をする羽根です。これも幼羽の時だけこのような薄い褐色に淡い褐色の 斑が入ります。基部の糸状羽部分がグレーなのは、ヒナ時代のグレーモコモコの名残です。

  L:25〜30mm 3枚
 顔盤という顔を廻るく取り巻くいわば縁取りの様な場所に生える羽根です。比較的長めのものは、顔盤の上方に、 羽根の先の方に白っぽく斑の入った羽根は、顎から口の周辺に生えています。レーダーのパラボラアンテナのような 形の顔盤は、集音効果を高めるためと言われていますが、ご存じの通り、彼らの耳は、顔盤の外側で左右少しづつ 位置の高さが異なっており、音の発信源を突き止めるのに有利になっています。オーディオで言うところの、 「音の定位」が良くないと、発信源を正確には掴みきれないと言う訳なのでしょうね。彼らの生活がかかって いるのですから。

  L:50mm
 下雨覆という部位の羽根です。前出「J」の雨覆が風切の上面そして、この下雨覆が下面から風切をサンドイッチに 挟み込んで、飛翔力を効率よく発生させる働きをしています。風切が皮膚から直接生えているだけでは、スムースな 風の動きからしたら、邪魔者が多すぎるので、これらのサブの羽根たちが覆って、整流効果を上げているわけです。 もちろん、大事な風切の基部へのダメージも少なくする働きがあり、隙間無くびっしりと生えています。 結果風だけでなく、雨の侵入も防いでくれます。  鳥たちの最大の敵が、体温低下だと言っても過言ではないでしょう。夏でもびっしょりと濡れた体で放置していると 水分の気化熱による体温下降から時には 死に至ることも珍しくはありません。彼らが餌を食べ、そのエネルギーで 飛翔するのも、ある意味で、筋肉の運動による体温上昇が目的の一端で、せっかく得られた体温を極力ロス無く 使おうと羽根もその役目を忠実に担っているというわけでしょう。

  L:80〜125mm 3枚
 部位からすれば、下尾筒という腰から下、尾羽の下側を覆い保護している羽根です。特に長い右端のものは、 脚の周辺に生えていて、一見腰蓑かスカートのようにも見えます。トップ右画像の脚の両側にふわ〜っと広がった 羽根がこれです。幼羽ですからお約束の横縞がありますが胸の部分よりは、幾分縞のピッチが荒くなっています。 彼らは、実は非常に走ることに長けた鳥類だと言うことはどなたもご存じないでしょうが、ばつが悪くなり逃げ 出したりする際には、この腰のスカートをやおら 持ち上げて、すたこらさっさと逃げ行く後ろ姿を見て私は思って しまいますが、知られたくない秘密なのかも知れませんね。




 
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