ようやくこの正月で、後厄が明けました。 明ける前は、仕事が忙しかった事もありましたが、釣りに行くのを少し控えていました。
あまり迷信めいた事は信じないようにしているのですが、昨年のあの事があってから少し慎重になりました。
しかし、最近の釣りはあまり調子が良くないのです。釣欲も以前ほど出てこないし・・・。一年前の出来事を少し振り返って見ました。
月夜のヒラスズキ
それは一年程前の出来事だった。
磯のヒラスズキは明るい時間帯の釣りと長い間決めていた。しかし、数年前にある知り合いから、夜にも結構釣れると言う話しを聞かされた。さらしが無くても釣れると言う事も・・・。
師走に入ってすぐ、満月の夜にいつもの磯に行って見た。
釣り場に着きバイクのライトを消すと辺りは闇に包まれた。南の空を見上げると、煌々と明るい月が空高く上っているのが見えた。
風は無く、穏やかな日だった。波の砕ける音だけが響いていた。
しばらくすると、目が慣れて、月の光に照らされた磯の様子がぼんやりと浮かび上がってきた。音の割りには、波は無く、まずは一安心。空気が冷たいせいで音が良く聞こえるせいだろう。
もう十年以上も使っている愛着のあるロットに、これまた古い傷だらけのリールをセットする。
フライは大きめの黒いストリーマー、別に色にこだわる訳では無いが、夜は黒がいいとある有名な釣り人が雑誌の記事に書いていたのを思い出し、とりあえず。準備を終えて、磯に降りる。
いつも通い慣れた磯だが、潮がかなり引いいるせいか、それとも周りがはっきりと見えないからだろうか?いつもとは全く雰囲気が違っている。
ゆっくり歩きながらポイントを確認する。
ラインをリールから引き出し、ラインバスケットに納める。波状岩の間に出来たスリットは、時々来る波で白く輝く。
フォルスキャストを数回の後にポイントにシュート。
いくら月夜で明るいとは言え、フライがどの程度飛んでいるのか全く分からない。
何となく、いつもの感覚で、この程度で岩の際に落ちているだろうと言う程度のものだ。ただはっきりと分かるのは、引き出したラインの長さと残ったラインの長さは分かる。しかし、キャストする度に確認していたら釣りにはならない。
幸いラインの方向だけは手に伝わる感覚ではっきりと分かる。
この程度だろうと言う距離以上に投げると、大抵岩にフライが引っ掛かるので、あながちこの感覚が大きく狂っている訳では無さそうだ。
最初の場所では全く何の感触も得られないままに終わった。その隣の小さなスリットに移動する。、最初のキャストで、ラインにコツンとした感触が伝わる。
一瞬、水面に波紋が出来たような気がした。果たして、それが狙いの魚なのかどうかは確信は持てない。しかし、何かがフライに反応したのは事実だ。少し釣れる気がしてきた、
だが、ポイントを移動するごとに、期待は失望に変わって来た。
全くアタリすら無いのだ。おまけに浅瀬でフライを3つはかり取られてしまった。
緊張感が薄れ、急に疲れと眠気が襲ってきた。時計を見るともう2時間以上釣りをしている。明るい時間帯だと一時間で探る場所を倍以上の時間をかけている。どうりで疲れる訳だ。
もう引き返そう。探ったポイントをみながら帰ることにした。
昼間と同じポイントを叩いて来たが狙いは間違っていないのだろか?夜はさらしが無くても釣れる?と言う事は、昼間のようにさらしの出来るポイントだけで無く、もっと広範囲に魚が散らばっているのか?
しかし、ポイントを絞り込んで釣りをしないととても探り切れない、砂漠に落としたダイヤを探すような気がした。
しかし待てよ、餌をあさりにヒラスズキは磯の浅瀬にやって来る。と言う事は、小魚が溜まっている場所に絞り込んで狙えば確率は高くなる筈。
そう考えながら歩いているとあるポイントが頭に浮かんだ。
そこは、いつもボラが波打ち際に群れている。とても浅く緩い駆け上がりになっている場所で、一見何の変哲も無い場所に見える。しかし、少し沖に二本のスリットが横に走っている。なだらかな波状岩に乗った波がそのスリスリットに沿って流れ出し、強い流れを作っている。
最後にこの場所だけやって見よう。そう思ってフライをティペットに結んだ。
張りきって巻いた最前線で活躍しているフライ達は、もう在庫が少ない。浅瀬でフライを取られる可能性が大きい。そこでフライボックスの片隅でもう十年近く出番を待っているフライを取り出した・・・。
もうこれ以上投げられないと言うところまで遠投してしばらくすると、ラインが急にひったくられた。
「来た!」
無意識の間にラインを鋭く引き合わせを入れる。竿を立てると、ラインから生命感が伝わって来た。リールからラインが引き出される。走りが止まった所でえら荒い。月の光にぼーっと浮かぶ波紋でそれと分かる・・・。
もう魚は岸際に寄って来ている筈だ。波が来た時に、一気に竿を起こし魚をずり揚げようとするがなぜか上がって来ない。
ん・・・?
魚の位置を確認する。
魚の居るであろう場所に目を凝らす・・・。
薄明かりの中岸際にやっと確認出来た。その後は何とか浅瀬に魚を誘導し無事ランディング。
ライトに照らし出された魚は思ったより遥かに大きかった。
どうりでなかなか上がって来ないはずだ。久々のリールファイトと読みが当たった喜びが込み上げて来た。
堂々とした大きな魚体は、銀色に輝きとてもきれいだった。
手早く写真を撮り、海に帰すとゆっくりと闇の中に泳いでいった。
夜釣りでの初めて釣果があった事に浮かれていた。まさかその後あんな事があるなんて、その時は微塵も思って居なかった。
全くそんな事は忘れていたが、それは本厄が明けるちょうど1ヶ月前の出来事だった。
それは一年程前の出来事だった。
(続く)
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釣り::回顧録 | 2008/01/17, (Thursday) 06:01 PM |
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