ムチャチャ園の環
○「100万人の人間力 〜パルシステム急成長の舞台裏」掲載(掲載タイトルは<小さな一歩 −生産者と利用者のキョリを縮める>、その他若干加筆・修正)
○彩雲出版 発行
うえはらゆうき

 二〇〇七年三月、東京にて『COME会(かむかい)』と題した交流会を開催した。これはもともと、無茶々園の直販会員の皆さんとの交流を目的に、数年ごとに開催している「東京集会」の枠組みを少し広げたもので、今回は「シャプラニール=市民による海外協力の会」(以下、シャプラニール)の参加を得ることが出来た。



シャプラニールの発表



実演販売も開催



生産者ともじっくり話し合う



最後まで残れた人で集合写真

 ちなみに「かむかい」とは無茶々園のある明浜町の放言で、「構うもんか!」というようなニュアンスをこめて使われる。例えば「あのおっちゃんに話通しておかなくていいの?」「かむかい!」というような会話が成立する。なぜシャプラニールと無茶々園が? まあ、そんなことはおいておいて、誰でも気軽に来なさいよ、という想いを込めて名づけたものだ。今後はより多くの団体が参加できる場へと発展していけばと願っている。
 シャプラニールは、一九七一年の独立直後を大洪水が襲い、疲弊しきっていたバングラデシュを支援するために設立されたボランティアグループのメンバーが中心になり、活動をはじめた市民団体である。日本生まれのNGOとしては老舗格で、日本の市民社会形成を長く先導してきている。現在はバングラデシュのみならず、南アジア全域を捉えた活動を展開しており、現地農村部の人々が作る手工芸品のフェアトレードにも取り組んでいる。
 無茶々園は《産地》、シャプラニールは海外・国内の人々を《つなぐ》役割。立場も全く異なり、またそれぞれ独自の歩みを展開してきた両者だが、深い共通点がある。それはどちらも生産者と利用者、そのキョリをなるべく縮めようとしていること。それが僕たち無茶々園の《顔の見える関係》を基盤とした有機農業・町作りであり、シャプラニールの農村開発からはじまったフェアトレード・市民運動なのだ。
 実は僕は2004年度の海外活動グループインターンシップとして、シャプラニールに一年間所属していたことがあり、三ヶ月弱という短い期間だが、ネパールとバングラデシュ現地のプロジェクトにも参加している。また学生のときから、所属研究室の研究調査活動と自主活動の両面から農山村の地域づくりに参画してきた。小さいながらもこれらの経験から、僕にとっては国内・海外という分別は無意味なものとなっていた。事実、「有機農業」「町作り」「フェアトレード」「市民運動」使う言葉は違っても、無茶々園とシャプラニールには深い共通理念を見出せるのだ。
 無茶々園とシャプラニールのみならず、日本国内の地域づくりと海外協力・開発は、歴史や方法論など、互いの取り組みに翻訳しうる要素を沢山持っているように思う。『COME会』の企画には、このような団体同士が交流し、互いを高め合う協働の場を作りたい、そのための小さな一歩を踏み出す意図が、僕にはあった。我ながら小難しいことを言っているように思うのは、とかく《分かりやすい》ことを求める現代人の悪い癖かもしれない。ならば「かむかい!」と言い放って、歩み出してみようじゃないか。自分自身で、みんなと共に。


>>もどる