帰り記号

JASRACの生演奏訴訟その歴史1

 (最新見直し2008.5.9日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 

 2006.4.20日 れんだいこ拝


【「ジャズ喫茶スワン訴訟」】(「新潟JAZZ喫茶SWAN」、「JASRACについて考える」)

 「ジャズ喫茶スワン訴訟」の経緯は次の通り。

 1964年、現経営者の孝夫さんの父、徳治さんがスワンを開いた。当初は一番の繁華街の古町にあった。キャバレー全盛で、どこも生演奏のジャズバンドを雇っていた。スワンは純喫茶だったが、東京から流れてくる若いジャズメンのたまり場になっていった。和田さん夫妻はが店を継いだ。

 2003年春、過去10年にさかのぼる使用料数百万円の請求書が郵送されてきた。03年春。道夏、ジャスラックの職員が店に説明にきた。青色申告書10年分を用意して「使用料を払うのにやぶさかではないが、去年1年の所得は18万2439円。実態にあった額にしてくれませんか」と申し出たが、職員は目も通さなかった。「人の音楽を流して金を払わないのはどろぼうと同じだ」と言われた。

 2003.11.19日、日本音楽著作権協会(JASRAC)は新潟地裁に対し、新潟の老舗ジャズ喫茶「スワン」(経営者・和田和子)が、店内演奏で使われる曲の過去10年分の著作権使用料550万円余りを支払っていないとして、演奏差し止め、楽器、レコードの差し押さえなどを求める仮処分を申し立てた。同様の請求は他の音楽喫茶に対しても強められている。

 和子さんと夫の孝夫さんは「納得がいかない。問題提起をしたい」として裁判に臨んだが、結局は過去10年分を約280万円に、月額使用料を1万3440円に減額することで和解した。

 2003.12.13日、新潟日報はオピニオン記事でこの問題を取り上げ、「ジャズ文化の灯消さないで 老舗やむなく閉店も 演奏使用料が重圧に」記事を掲載している。これを紹介する。

 「著作権」という強風直撃

 新潟のジャズストリートを「著作権」という名の強風が吹き抜けている。十一月十九日、日本音楽著作権協会(JASRAC)は新潟地裁に対し、新潟の老舗ジャズ喫茶「スワン」が、店内演奏で使われる曲の著作権使用料五百五十万円余りを支払っていないとして、演奏差し止め、楽器、レコードの差し押さえなどを求める仮処分を申し立てた。同様の請求は他の音楽喫茶に対しても強められている。新潟のジャズ文化をはぐくんできた小規模な営業と著作権保護という大義名分を両立させるハーモニーは成り立たないのだろうか。

 日曜の七日夜、新潟市西堀通四の喫茶スワンでは、週末恒例の生演奏が行われた。狭い店内に、地元演奏者の熱気がこもる。耳を傾ける客の数はわずか三人だが、開店から三十九年という市内きっての老舗が、ジャズを根付かせたいと続けてきているイベントだ。だが、ライブも店自体の営業もいつまで続けられるのか、店を切り盛りする和田和子さん(五十四)の表情は暗い。

 JASRACがスワンに対し、生演奏や店内でのレコード演奏についての過去十年分を含む音楽著作権使用料の支払いを求め、本格的交鈔に入ったのは今春。しかし、分割払いでも憑き月々五万円以上になる支払額に対し、スワン側は「経営が成り立たない。売上の実態に合った支払いにしてほしい」と主張した。

 「仮処分」

 コーヒー四百円。ライブは二千円。昨年度、同店の売り上げは五百八十五万円だったが、経費を除いた利益は十八万円。経費には人件費は含まれておらず、夫の孝夫さんが運転手などで働いて生活を支えている。しかし、裁判所での調停は整わず、JASRACは「違法状態を放置できない」と仮処分請求を行った。生演奏に対して県内で初の申請だった。

 同様の請求は他のジャズ喫茶などにも行われている。新潟古町通六の「JAZZ・ママ」が先月十九日閉店。お別れライブでミュージシャンや愛好家は三十五年以上続いた老舗との別れを惜しんだ。同店もJASRACから、過去分も含め三百万円以上の支払い請求を受けていた。

 店主でドラマーでもある佐藤政良さん(六十二)とともに店に立っていた妻の冨士子さん(七十一)が、心筋梗塞で突然帰らぬ人となったのは、二回目の調停を数日後に控えた十一月十五日。「ジャズが好きだし、若い人にも演奏の場を提供したいという思いで、夫婦で何とかやって来た。足が出てもやってきてくれるミュージシャンにも支えられてきたがもう無理だ」と佐藤さん。「店を閉めても支払えといわれている。自己破産するしかないのだろうか」と疲れ切った表情だ。

 「イベント」

 新潟市では今月一月と七月、市内のジャズライブを行う店十店ほどが協力して、それぞれ同時並行で行う生演奏を千円で鑑賞できるイベントを行った。これまで横の強力が少なかった各店が、新潟のジャズを盛り上げようと取り組んだ初めての行事だった。「スワン」は、このイベントの実行委員長も努めていた。

 ここでの著作権使用料についても、各会場を入場料千円の一つのも催しとして扱い、六万程度とするよう求める実行委員会側の主張に対して、JASRACは「たとえ一つしか見られなくても千円の入場料が必要」として、各店で千円の入場料を取った場合と同じ三十二万円余りの支払いを求め対立。来年一月に同様のイベントを計画している実行委員会は折れざるを得なかった。

 波紋は広がりつつある。JASRAC大宮支部は、「スワン」に対する仮処分申し立ての翌二十日、県内の三十店舗に対し「JASRAC NEWS」という文書を送付した。文書は「手続きに応じない店は随時裁判を提起していく」「裁判になると通常の使用料より高額な損害金を・・・お支払いいただくことになる」と迫る。

 経営者らはいま、署名運動の準備を進めている。「著作権使用料を支払う必要があるのは分るが、収入に応じた算定をしてほしい」「もうけ目当てでなく、手弁当でジャズ文化をはぐくんできた」「街から音楽の灯を消さないでほしい」というのが経営者らの思いだ。

 「万引きだ」

 こうした声に対し、大宮支部の高野勝彦支部長は「個別の店の収入を把握するのは実質的に不可能。作詞、作曲家ら著作権者の権利を守らなければ音楽文化は育たない」と答える。新潟県担当者は「不満があるから使用料を払わないのは、品物の値段が高いのを理由に万引きするのと同じだ」とも付け加えた。

 著作権など知的財産権に詳しく、今回経営者から相談を受けている新潟第一法律事務所の相馬弁護士は「特許など工業所有権では、売り上げに対する比率などで個別に使用料を決めている。音楽著作権では類別ごとに当てはめているから、ある意味で硬直化している。ルールを順守しやすい仕組み、実態に合わせた運用があっていいのではないか」と語る。

 ネット上の利用や携帯電話の着メロなどでJASRACの取り扱う年間使用料は千億円を越え実質的な「独占状態」にもある。新たにBGM的に音楽を流す店舗からの使用料徴収も始まっている。すそ野が広がり、巨大になるほど、その運営の柔軟性、透明性がもとめられるのではないだろうか。

 (新潟日報2003年12月13日記事全文引用)


 「ジャズ喫茶スワン訴訟の行方」が、「SWAN近況」で報告されている。実体験上の貴重情報故にこれを転載しておく。(読みやすくするため、れんだいこ責で編集替え、一部文言挿入しております)

 SWAN近況

 (2004年)3月26日JASRACとの1年間に及ぶ騒動が終結、和解で収束しました。多くの皆様にご心配をお掛けしました。署名・カンパ等ご支援賜り感謝致しております。昨年7、9月調停2回不調。仮処分申請後12、1、2、3月2回の地裁審尋での結果、過去10年使用料550万請求が280万(150万現金 130万130ヶ月払い)に、月額使用料52380円請求が13440円(業種5算定20000×0.8×0.8)になり、和議に至りました。納得いきませんが、店舗継続の為、やむを得ませんでした。JASRAC音楽著作権使用料規程の改正を求める署名は継続中ですので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 1 音楽著作権使用料規程の使用料算定方法

  ジャズ喫茶スワン席数40席・レコード演奏のみとして業種5の算定。ジャズ喫茶包括契約・18900円/月(レコード演奏のみ)・同規模    の喫茶店BGM契約・6000円/年(レコード演奏のみ)
 37倍の額の使用料です。コーヒー代は双方同じ400円位。オーディオ、CD等経費は余分に掛かります。「いい音でいい音楽を多くの人に」と考えるジャズ喫茶の経営は不可能になります。
 包括契約と1曲毎の算定があり、スワンは1曲毎の使用料だと24000円/月。
 同一店舗に2つ以上の算定がある。これは実情に則した課金の一面より、使用料徴収の脅しに使われる。
 ジャズ喫茶スワンを使用料規程1曲毎で正確に計算すれば、レコード演奏1曲5分以内40円。40円×(60÷5)曲=480円(1時間で480円)。営業時間AM10:00~PM10:00で12時間。480円×12時間=5760円。1ヶ月、30日営業すると、5760円×30日=172800円。
 使用料規程の1曲毎の算定をジャズ喫茶に適用するとたいていの店の存続は困難と思われます。BGM使用の喫茶店との格差を考えると商売上の公平性に欠けると共に音楽著作権使用料規程そのものに無理があると言わざるを得ません。
 昨年新潟市内で行われた市民有志立上げのイベント「新潟ジャズストリート」1、7月分総売上2回で200万弱のところへ使用料33万の請求。定員20人前後の店舗会場1会場毎に100人定員のコンサートで計算。しかも1000円共通チケットで出入り自由にもかかわらず、2回公演での計算。ストリート(料金なし、無報酬)まで100人定員の計算で加算。共通チケットについては規程がないとの事で、何の考慮も払われませんでした。また、「3億円のコンサートで20万の使用料は安すぎる」とのJASRAC評議員会での玉木氏発言がHP上にあります。JASRACは恣意的に定見もなく使用料徴収をしています。文化庁は地域文化振興の見地から、JASRACに対する監督監視に一層の公正性が求められているのではないでしょうか。

 2 過去10年の音楽著作権使用料未払い分請求

 JASRAC著作権侵害差止等仮処分の申請を新潟地裁に11/19提訴。記者会見。翌日県内ライブ店30余に恫喝文配布、SWANを使用料徴収の広告塔に利用した。

 過去10年分使用料・550万円。(内訳)1曲1回の使用料・レコード演奏40円、生演奏90円。1日の使用料レコード演奏・40円×30曲=1200円、生演奏90円×14曲=1260円。1ヶ月の使用料レコード演奏・1200円×30日=36000円、生演奏1260円×13日=16380円。合計 月額52380円

 9月調停不調時上記と同様の算定方法で過去10年分422万月額36800円
 9月調停不調時包括契約表5の算定方法で過去10年分322万月額35200円
 同一店舗に3ヶ月間で3種類の算定額、しかも200万以上の差がある。

 この様な算定と請求が、法律的に又一般慣習からみて、どのような整合性があるのか監督官庁に是非お尋ねしたい。

 不当利得返還の時効は10年?10年前何の曲をかけたか覚えていません。JASRACは昨年1年間に3回オリファサービス探偵社を使って実態調査をしたそうです。その3名記憶にあります。暇ですから。リクエストしていました。それが証拠だそうです。他にHPプリントアウトしたもの、保健所への届け出、NTTとの契約も音楽著作権侵害行為の証拠だそうです・・・

 3 音楽文化に対する認識

 JASRACの見解「ジャズのアドリブは原曲のアレンジである」コード・インプロビゼイションをアレンジとするなら、どんな曲が生まれようと何かから影響(インスピレーション)を受けている筈です。音楽著作権協会は自己の権限を拡大解釈しているとしか思えません。
 JASRACは音楽文化振興の第一義は「作者の権利を守る事」と言うが、現実には生まれようとしている楽曲に対する圧迫と、演奏者の表現の自由と、聴くものの楽しみを奪う事にもなる。その強圧的考え方には疑問を通り越して怒りと絶望を感じた。

 4 管理曲の範囲
 JASRACの管理曲は何か。「管理している物は曲名と作曲者名です」、「音も譜面もない」ではなにをもって侵害行為と言うのか。スワンに対しては、裁判時「楽曲リスト」を提出、平成4年度版でした。只今平成16年ですけど・・・JASRACのHPにある毎月書き換えJ-WIDで検索したら、著作権は作者死後60年が存続期間ですが、ジャズスタンダードナンバー中管理外曲が現在30%以上はある。今後どんどん増える。一例ですがガーシュインは切れている。
 管理外曲100曲発見。後は演奏者オリジナル曲でライブを開催します。著作権使用料は発生しませんよね。管理曲使用の場合は1曲90円お支払いする。これが通らない。理由1、ジャズマンは長生きである。2、ジャズのアドリブはアレンジ又はその連鎖である。3、そのような営業形態は見出せないし極めて困難と考える。4、管理ができない。
 管理外曲ライブは認めないとの事ですが、JASRACは文化事業として2002年神戸、2003年東京で「PDコンサート」~ありがとう新たな出発の名曲たちへ~を開催しています。ライブハウスからはバッハやろうが、PD曲やろうが、オリジナル曲やろうが、管理外曲やろうが、どうしても取るという仕組みです。弱い物いじめで取れる所から取る。著作権法はもっと公正なものだと思います。この様な誤った解釈は、監督官庁の意向に沿ったものなのでしょうか。もしそうでないのであれば、早急に事実を検査し是正すべく対応していただきたくお願い申し上げます。このままではJASRAC独断を容認しているようにも見受けられ、残念でなりません。

 5 説明不足・強圧的態度・経理の不透明

 音楽著作権使用料規程にある使用料規程細則の開示を求めたがいまだ返答なし。新潟
 ジャズストリートに関しては、説明を求めたところ30分程で新幹線の時間だというので後程とわかれたらそれっきり。説明は終わりましたの一点張り。尚も説明を求めると、音楽使用許諾を出さないと参加全店を脅迫する始末です。唖然としてしまいました。
 「どろぼうと同じだ」、「万引きだ」、「頭が悪い」等罵詈雑言を浴びせる。そうしないと使用料徴収ができないのでしょうか。お金を頂くものの態度とは思われない。新潟では、同業種で閉店に追い込まれた店1店。他2店は夜のみ営業でスナックとして契約過去10年分80万と月使用料1万~2万(ライブ頻度による)でした。みせしめに1~2店に高額を請求して、「ああなると困るでしょ」と周りの数店から使用料を徴収する。新潟の老舗「ジャズママ」は高額の過去請求を受け、昨年11月35年の歴史に幕を閉じた。昨年9月~今年4月迄数回の調停後、自己破産もならず、2000円/月を死ぬまで支払うと約束させられた。文化庁の許認可業者のしわざとはとても思えない。なんでそんなにお金が必要なのか。行き過ぎではないのか。
 JASRACは1000億を超える収入があるそうです。それなのにこの不透明な仕組みはなんだろう。音楽発信源であるジャズ喫茶・ライブハウスと著作権管理業者のJASRAC、双方にとって不幸な事です。この仕組みは問題だと思いませんか?

*この事態を改善して頂く為に署名を集めています。ご協力よろしくお願い申し上げます。

   *掲示版開設しました。「JASRACについて考える」 情報交換して解決法を模索したいのです。

(私論.私見) 「著作権という名の強風」考

 いずれ「JASRAC問題」が社会問題になりそうな気配を感じる。多くの者が「全方位的著作権」を認定している故にこういう本末転倒事態が発生する。「全方位的著作権」とは要するに現代の関所税である。その昔、寺社、組合(ギルド)が万能社会を作り出し、戦国武将・織田信長がこれらを撤廃し「楽市楽座制」を導入した。これにより経済の活性化が促されたのは周知のことであろう。これを思えば、「知的関所税」というのは特殊現代の形態であるから、第二の信長が現れないといけないということになる。

 「著作権使用料を支払う必要があるのは分るが、収入に応じた算定をしてほしい」などという弱腰ではいずれ、弁護士の口車に乗せられてしまうであろう。弁護士の知性を窺うのに、法哲学的な知性は皆目貧困で、単に法文を職人的技法で操る術師に過ぎない。故に、弁護士に期待してみても何ら事態は変わらないことを知るべきである。むしろ、手前味噌ながられんだいこの観点を援用したほうがよほど賢明である。

 この問題は、著作権そのものの認識間違いから発生している。仮にそのような権利が「全方位的著作権」として認められるにしても、肝心な事が前提にされていなければおかしい。肝心な事とは、「全方位的著作権」の適用は少なくとも、「『社会的文化、人民大衆の生活福祉の向上に資するものでなければならないという公理』と抵触せざる限りにおいてである」という法理論との整合性が問われねばならない、ということである。

 この弁えが無いから「JASRAC的強権」が罷り通り、音曲産業の保護育成という美名の下での衰退がもたらされ、明らかに利権化し過ぎているというのに、これに誰も抗することができないという没知性的事態に追い込まれることになる。れんだいこに云わせれば、「全方位的著作権そのものがシロアリ理論」なのであり、人民大衆はこれに闘わねばならない。しかしだ、マスコミも都合の良い「ジャーナル著作権」を主張している訳だから、インテリ学会もまた更に輪をかけたような「知的所有権」の主張に血眼(ちまなこ)な訳だから、連中がJASRAC異議を唱えることはできはしない。同じ穴のムジナでしかない。つまり、誰もあてにならない、助けてくれない。

 れんだいこは主張する。憲法の空洞化現象に応じて各界が得手勝手な法理論を振り回しており、互いに身動き取れない社会へ突入しつつある。つまり、社会がアノミー化しつつある。こうした折には、今一度国内法の最高規範である憲法から紐解いていかねばならない。文明化という正義美名の実は野蛮知性の振りかざしに対して断固として抗する知性を練磨せねばならない。この視点を失した時、歴史的に形成され最も我々が習性とさせられている辞を低くして哀訴する道しか無くなるであろう。

 ちなみに「多くの良心的な人々は著作権者の権利を認め、作曲者に敬意を払い、できる限り穏便に使用許可をしてもらいたいと考えている」云う者があるが、ならばその対価としてJASRACの徴収金の経理明細を求めよ。「著作権者の権利を認める」ことが形態、様式、分野の如何を問わず「あらゆる空間それも末端にまで権利が及ぶべし」ことを論証してみよ。「多くの良心的な人々は全方位全域的著作権を認めている」云々と云い為しているが、「多くの良心的な人々」がどういう人たちのことなのか、「そのどこが良心的なのか」論証してみよ。汝、言葉の独り歩きで酩酊しているその暗愚さを恥じよ。

 2004.2.14日 れんだいこ拝

【「新潟市のJAZZ・ママ閉店事件」】
 2003.11.19日、新潟古町通六の「JAZZ・ママ」が閉店した。同店もJASRACから、過去分も含め三百万円以上の支払い請求を受けていた。 去る11.15日、店主でドラマーでもある佐藤政良さん(62)とともに店に立っていた妻の冨士子さん(71)が心筋梗塞で突然帰らぬ人となった。2回目の調停を数日後に控えていた。「ジャズが好きだし、若い人にも演奏の場を提供したいという思いで、夫婦で何とかやって来た。足が出てもやってきてくれるミュージシャンにも支えられてきたがもう無理だ」と佐藤さん。「店を閉めても支払えといわれている。自己破産するしかないのだろうか」と疲れ切った表情だ。お別れライブでミュージシャンや愛好家は三十五年以上続いた老舗との別れを惜しんだ。

【名古屋のライブハウス「ワールド・ コーポレーション」事件】
 2007.3.15日、人気歌手の曲を無断で生演奏させたライブハウスに、著作権料1395万円支払命令。著作権料を支払わずにライブハウスで米国人気歌手らの曲を生演奏させたとして、日本音楽著作権協会(JASRAC)が、名古屋市中区の飲食店経営会社「ワールド・ コーポレーション」と社長に著作権料約1630万円の支払いを求めた訴訟の判決が名古屋地裁であった。

 中村直文裁判長は「著作権侵害を認識しながら、許諾のないままバンド演奏を継続し、協会に損害を与えた」として、同社と社長に計約1395万円の支払いを命じた。 

 判決によると、同社は中区錦のライブハウスで1996年7月~昨年2月、スティービー・ワンダーらの楽曲をバンドに生演奏させていたが、協会に使用料を支払わなかった。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070315-00000506-yom-soci )

【生演奏ピアノ演奏事件判決その1】
 著作権侵害を継続していた飲食店経営者に懲役10ヵ月(執行猶予3年)の有罪判」、「ビートルズ演奏で逮捕! なぜだという素朴な疑問、J-CASTニュース」その他を参照する。
 練馬区石神井町の飲食店「ビストロ・ド・シティ」(経営者・豊田昌生氏)は、1981(昭和56).4月に同店を開業、店内で客の求めに応じて、ビートルズの「イエスタデイ」、「ヒア ゼア アンド エヴリホエア」などをハーモニカで演奏したり、ピアニストに演奏させていた。

 1985.10月、JASRACは職員を派遣し、生演奏には利用許諾契約を結んで使用料を払う必要があると告げ、また文書を送付するなどして、店内でのピアノ演奏に伴う著作権手続き(音楽著作物利用許諾契約)の必要性について繰り返し説明してきたが、経営者は、「クラシック曲しか演奏しない」、「みんなが払っている訳ではないし、お客に頼まれた時に演奏するだけ」、「今後は演奏はやめる」などと主張して契約を拒否した。その間、JASRACが著作権を管理する音楽作品を無断演奏し続けた。

 2001(平成13).2.7日、JASRACは、管理楽曲の演奏禁止と楽器類の執行官保管を求める仮処分命令を東京地方裁判所に申し立て、同年5.29日、JASRACが著作権を管理する曲の演奏を禁ずる仮処分が下された。JASRACは、カラオケや生演奏での使用料は、客席数や演奏時間などを基準に算定して、同店には33席あり、1曲当たり90円。仮処分の時点では、過去10年分の未払い使用料は約840万円と計算した。しかしながら、だが「計算方法が納得できない。負債を抱え、支払いはできない」と拒み、演奏を続けた。

 その後のJASRACによる15回にわたる実態調査で、同店が裁判所の決定を無視し、JASRACの管理楽曲をピアノにより継続して演奏していることを確認したため、話し合いによる解決はもとより、民事訴訟でも解決の実効性が期待できないと判断し、適法に音楽を利用している方々との公平性を維持する観点から刑事告訴を行った。2006.9.19日、JASRACは、「ビストロ・ド・シティ」の経営者を著作権法違反の疑いで警視庁石神井署に告訴した。

 JASRAC広報部は、J-CASTニュースの取材に対し、「本来ならばこうしたことはしたくなかったが、公平性の観点からもこれ(刑事告訴)以外に手段を取ることはできなかった。これほど悪質なケースは珍しく、JASRACとしてもやむを得なかった」と答えている。

 2006.11.8日、石神井署は、「社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の許諾を得ずに、同協会が著作権を管理する曲を自身が営業するスナックで生演奏していた疑い」、「2006.8月、9月にJASRACが著作権を管理するビートルズの「ヒアゼアアンドエブリワン」、「アラウンドザワールド」などの曲を、JASRACの許諾を得ずに店内でピアノやハーモニカで演奏して顧客に聴かせるなどして、著作権侵害を行った疑い」で経営者(73歳)を逮捕した。

 著作権法違反の容疑で逮捕に至るケースは極めて異例で、同協会によれば、1948年からこれまでに刑事告訴したのは146件だが、最近では極めて稀で、都内でもここ20年で4件ほどしかない。あきらかな著作権侵害が確認されても、そのほとんどが訴訟の段階でなんらかの解決に至るケースが多い。逮捕するか否かは警察の判断によるため、今回のケースは「よっぽど悪質」と判断された可能性が高い。JASRACは「それ以外に手段がなかった」としているが、ネット上では刑事告訴したJASRACへの批判の声が上がっている。11.2日、東京地方検察庁が、東京地方裁判所に起訴(公判請求)した。

 2007.1.15日、初公判。豊田被告は被告人質問で、「まさか逮捕されるなんて。法律を甘く見ていた。演奏料を客からとっている訳ではないので、払わなくていいと思っていた」と悔いた。

 1.22日、東京地方裁判所(中川正隆裁判官)は、ピアノ演奏により長期間にわたって著作権侵害を繰り返していた飲食店経営者に対し、懲役10ヵ月(執行猶予3年)の判決を言い渡した。判決言い渡しの量刑理由の中で中川裁判官は、「仮処分決定後も著作権侵害を認識していながら演奏を継続したことは、犯意は堅固で常習的犯行であり、然るべき処分は免れない」とした。 

 判決後、豊田被告は「バーを続けたいのは山々だが、自転車操業で借金もあり、過去の使用料を支払う余裕がない。JASRACには分割払いをお願いしているが、契約できなければ、ピアノは処分するつもりだ」と、苦悩をにじませた。生演奏は、逮捕を機に中止している。(2007.1.23日付け読売新聞、溝田拓士記者の記事より)

 「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」の発起人で、IT・音楽ジャーナリストの津田大介さんは今回の事件について次のように述べる。
 「(JASRACに払う使用料ついては)金額の妥当性や音楽の自由を主張する人は多くいる。実際ライブハウスなどでの(生演奏の)徴収の仕方はあいまいで、またそうやって徴収せざるを得ない面があるのも確かだ。あいまいなシステムであいまいに分配しているというシステムに対する不満を持っている人が多いというのが問題だ。そのあいまいな部分を演奏者、権利者、消費者のあいだでもっと議論し、時代に合わせた制度にしていく必要性がある」。
(私論.私見) 

 本件は、「ビストロ・ド・シティ」において、JASRACが著作権を管理する音楽作品が長期間にわたり無断演奏されていた事件とされているが、そのように受け止めべきであろうか。経営者がピアノ演奏店にしようがしまいが、それは経営者の判断である。本来なら、JASRACは、この経営者を音楽普及の功績有りとして表彰すべきものであって、金払えなぞとは云わないものだ。しかも何と840万円とは。これを容認するとしたら、社会が狂っているとしか言いようが無い。

 2006.2.4日 れんだいこ拝

【生演奏ピアノ撤去判決事件】
 「JASRACと音楽の使用者 著作権を巡り紛争「泥沼」、J-CASTニュース」(http://news.livedoor.com/article/detail/3012287/)その他を参照する。
 和歌山市内にあるレストラン「デサフィナード」(経営者・木下晴夫氏、56歳)が開店以来ピアノなどによる生演奏を行っていたところ、2004.6月、JASRACに音楽著作権料の支払いを催促された。木下氏は、「演奏のほとんどは著作権に触れないクラシックやオリジナル曲であり、つまりJASRACの管理楽曲以外の演奏であり、請求されるに及ばない」、「音楽文化の発展のために店舗を提供している」、「JASRACの使用料徴収の仕方が横暴」として拒否し続けた。

 2004.10.20日、JASRACは、「演奏中止の仮処分が退けられたケースは聞いたことがない。オリジナルと称している曲も元の曲をアレンジしただけで、使用料は払うべきだ」と主張し、経営者が著作権侵害を繰り返しているとして演奏差し止めと、著作権侵害による損害金約250万円の支払いを求める訴訟を提訴し、大阪地裁に仮処分を申請した。経営者は、「使用料の必要な曲は今後、一切演奏しない」と約束したが、2005.4月、大阪地裁は、「演奏内容を確認するすべがない。将来的にも著作権侵害行為を続ける恐れがある」として演奏を差し止める決定を出し、ピアノ撤去、損害金約190万円の支払いなどを命じる判決を下した。

 これに対し、木下氏は、「著作権曲は演奏してない。確認してくれ」としてクラシックやオリジナル曲だけを演奏していることを証明するため、店に音声付きモニターカメラを設置し、演奏の様子をリアルタイム中継しネットで流し、協会側にパスワードを知らせて常時確認できるようにした。その結果、同年9月、仮処分抗告審で、大阪高裁が「曲を確認できる状態になった」として仮処分決定を取り消した。

 にもかかわらず、JASRACは演奏中止を求め提訴。木下氏は、「仮処分決定が取り消されたのに、改めて演奏差し止めの提訴をするのは納得いかない。司法には正しい判断をしてほしい」と訴え続けた。

 木下氏は、この問題を世に問うことにした。「デサフィナードは現在JASRACと裁判中です。みなさまのご意見、メッセージなどお聞かせください」とコメントつけて「JASRACについて考える掲示板」を設置した。次のようなメッセージを発信している。

 デサフィナードは、地域の音楽文化発展を阻害するJASRACの横暴なやり方に抗議し、JASRACの音楽著作権独占による弊害の是非を求め、JASRACの管理楽曲は演奏しないという形の抵抗運動を続けています。

 JASRACは、音楽の著作権者権利を擁護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に資することを目的として設立された文化庁の外部団体であるにも関わらず、音楽著作権管理業務を独占し、それを盾に著作権法38条に違反し営利を目的としない演奏活動に対してまで法外な料金の支払いを強要し、わが国の音楽文化発展を阻害しています。

 デサフィナードでは、このJASRACの公益に反する営業方法の是非を求め、全国の音楽愛好家と連携し、JASRACの音楽著作権管理業務の独占禁止を求める運動を展開しています。この戦いのため、デサフィナード店では当面JASRACの管理楽曲は演奏しないという抵抗運動を展開しています。皆様のご理解とご支援をお願いします。


 2007.1.30日、大阪地方裁判所(裁判長・田中俊次)は、「将来的にも著作権侵害行為を続ける恐れがある」として、レストラン側に損害金約191万円の支払いとピアノの撤去、楽器類の搬入の禁止とを命じる判決を下した。 


 JASRACは、「JASRACとしては、著作権を実効的に保護するとともに、適法に音楽の利用している方々との公平性を維持する観点から、このような悪質な権利侵害行為に対し、今後も法的措置を含めて適正に対処していく方針です」とする声明を発表した。「生演奏を行っている店の経営者の中にも、おなじような口実で侵害行為を続けるケースが少なくない。モラルが低下しており、悪しき風潮を正していきたい」と、“一罰百戒”の効果にも期待している。

 これに対し、レストラン側は「JASRACの行為は自由な音楽活動を妨害するもので、今回の判決はとんでもない話だ。JASRACは音楽普及を目的とした文化庁の外郭団体であるにもかかわらず、音楽文化の振興を遮断する行為に及んでいる。むちゃくちゃな判決だ」とし、控訴する方針だ。

 同レストランでは今回の訴訟にともなって、HP内に「JASRACについて考える掲示板」と題された掲示板を開設したところ、「JASRACに負けないでください!!応援してます!」等々声援メールが相次いでいる。
(私論.私見) 

 本件も同様で、「デサフィナード」の経営者・木下氏は、JASRACより音楽普及の功績有りとして表彰すべき方である。それが逆に沙汰されるとは。世の中が狂っている。

 「音楽の話題から、JASRACと闘っている店発見!
 ウィキペディアの話題ばかりでなく、今日は音楽の話題をしようと思います。私自身、タンゴファンであり、かつブラジル音楽のボサノバも聞きます。レコードやラジオばかりでなく、やはり生演奏の迫力ってすごいでしょう。
タンゴだったら、ハンドネオンを間近で聴けるって俺にとっては一生の思い出であります。「イパネマの女 Garôta de Ipanema 」とか「レカード Recado」とか、ジャズとかボサノバとかの生演奏、聴けた日のこと、すごく印象に残るのではありませんか? そういう生演奏の店に、因縁つけてみかじめ料じゃなかった「著作権料払え」とやっているのがJASRACとかいう日本音楽著作権協会を名乗る人たちであります。

 和歌山市にある「デサフィナード」という音楽生演奏の店では、断固JASRAC相手に裁判闘争行っています。
http://www.desafinado.jp/
 デサフィナードは、地域の音楽文化発展を阻害するJASRACの横暴なやり方に抗議し、JASRACの音楽著作権独占による弊害の是非を求め、JASRACの管理楽曲は演奏しないという形の抵抗運動を続けています。
 JASRACは、音楽の著作権者権利を擁護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に資することを目的として設立された文化庁の外部団体であるにも関わらず、音楽著作権管理業務を独占し、それを盾に著作権法38条に違反し営利を目的としない演奏活動に対してまで法外な料金の支払いを強要し、わが国の音楽文化発展を阻害しています。

 デサフィナードでは、このJASRACの公益に反する営業方法の是非を求め、全国の音楽愛好家と連携し、JASRACの音楽著作権管理業務の独占禁止を求める運動を展開しています。この戦いのため、デサフィナード店では当面JASRACの管理楽曲は演奏しないという抵抗運動を展開しています。皆様のご理解とご支援をお願いします。(以上デサフィナードのホームページからの転載です。問題があれば、削除しますのでご理解よろしくお願いします)

 読売新聞2007年1月29日 和歌山 - 使用料巡り訴訟 あす判決

 著作権を侵害しているとして日本音楽著作権協会から申請された仮処分で、ピアノなどの演奏を差し止められた和歌山市内のレストランが、著作権使用料@を払う必要のないクラシックやオリジナル曲だけを演奏していることを証明するため、ネットで協会に演奏の中継を始めたところ、仮処分の抗告審では演奏を認める異例の決定が出された。協会はこれを不服として提訴。攻防が続いた訴訟の判決は、30日に言い渡される。

 レストランは、和歌山市の「デサフィナード」。協会が2004年6月、著作権の管理を委託されている曲を演奏しているとして著作権使用料を求めたところ、経営者の木下晴夫さん(56)が「演奏のほとんどは著作権に触れないクラシックやオリジナル曲」と拒否した。

 協会は同10月、大阪地裁に仮処分を申請。木下さんは「使用料の必要な曲は今後、一切演奏しない」と約束したが、地裁は05年4月、「演奏内容を確認するすべがない」と演奏を差し止める決定を出した。これに対し、木下さんは曲目に問題がないことを示すため、店に音声付きモニターカメラを設置。演奏の様子をネットで流し、協会側にパスワードを知らせて常時確認できるようにした。

 結果、抗告審では、大阪高裁が「曲を確認できる状態になった」として仮処分決定を取り消した。協会の担当者は「演奏中止の仮処分が退けられたケースは聞いたことがない。オリジナルと称している曲も元の曲をアレンジしただけで、使用料は払うべきだ」と主張。翌10月、演奏の差し止めと、著作権侵害による損害金約250万円の支払いを求める訴えを大阪地裁に起こした。木下さんは「仮処分決定が取り消されたのに、改めて演奏差し止めの提訴をするのは納得いかない。司法には正しい判断をしてほしい」と訴える。

 @ 著作権使用料 音楽などの著作物を利用した場合に著作権の官吏団体に支払う料金。映画を除く著作物の保護期間は原則として著作者の死後50年までで、クラシック音楽のほとんどは不要だ。日本音楽著作権協会は歌謡曲など約720万曲の著作権を管理しており、カラオケ店の9割と使用契約を結んでいるが、生演奏で曲目を把握しにくいライブハウスやジャズ喫茶との契約は、5割強にとどまっている。 

 読売新聞2007年1月31日 損害賠償金190万円やピアノ撤去命じる - 生演奏著作権訴訟

 ピアノの生演奏をしながら著作権使用料の支払いを拒否するのは違法として、日本音楽著作権協会が和歌山市のレストラン「デザフィナード」経営者の木下晴夫さん(56)を相手に演奏差し止めなどを求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。田中俊次裁判長は「将来的にも著作権侵害行為を続ける恐れがある」として演奏差し止めやピアノ撤去、損害金約190万円の支払いなどを命じる判決を言い渡した。


 以上 goo ソーシャルニュースからでした。本当に、日本音楽著作権協会および、担当の裁判官には、頭にきますが。裁判闘争は、これからが勝負でしょう。デサフィナードの従業員のみなさん、そしてオーナーの木下晴夫さんのご活躍、ご期待申し上げます!


 



(私論.私見)