帰り記号


 

教育勅語と現代語訳
Imperial Rescript on Education and the modern translation


    教 育 勅 語 (教育ニ関スル勅語)


上に掲げたのが教育勅語の原文です。文語体であり、句読点もなく、仮名字が片仮名で濁点を付けない形で書かれていますので、お読みいただくために、難しい漢字に振り仮名を付け、濁点と句読点を入れてみました。




 <ことば豆辞典> その一

【 朕 】 天子の自称。中国古代では一般人の第一人称だったが、秦(しん)の始皇帝(しこうてい)のときから天子のみの自称となった。
【皇祖皇宗】 天照大神(あまてらすおおみかみ)に始まる天皇歴代の祖先。
【億 兆】 限りなく大きい数。転じて万民を指す。

【恭 儉】 人にはうやうやしく、自分の行いはつつしみ深いこと。
【徳 器】 徳行と器量。道徳にかなった良い行いと、それぞれの地位や役目にふさわしい才能や人柄。
【世 務】 世の中のつとめ。

【緩 急】 緩やかなことときびしいこと。急なこと。危急の場合。
【天壌無窮】 天地と共にきわまりのないこと。「日本書紀」の天照大神の神勅(しんちょく)に由来する言葉。
【拳々服膺】 胸中に銘記して忘れず守ること。中国の古書「中庸」にある言葉。

教育勅語は、用語や文体が今では大変難しいとされ、多くの人により現代語訳が行なわれています。国民道徳協会の現代語訳がよく知られていますが、かなり意訳されていますので、僭越ですが自分なりに次のように現代語訳をいたしました。


 

教育勅語は、正式には教育ニ関スル勅語といいます。明治天皇の命により、井上毅(いのうえこわし)と元田永孚(もとだながざね)が文章の起案に当りました。起案者の中心となった井上毅は、フランスに留学した経験から、教育勅語が思想や宗教の自由を侵さないようにすることを重視したと伝えられています。当時の大日本帝国憲法(明治憲法)では「凡(すべ)テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅(しょうちょく)ハ国務大臣ノ副署(ふくしょ)ヲ要ス」と定められていましたが、教育勅語は明治天皇ご自身が国民に親しく語られるお言葉であり、国務に関する詔勅に該当しないものとして、国務大臣の副署を付けない勅語として発布されました。

教育勅語は、明治23年(1890年)10月30日に発布されて以来、学校などで50年以上の間、四大節(しだいせつ)の式典に朗読されてきました。また、各学年の修身(しゅうしん)の教科書の最初のページに掲載されていました。

昭和20年(1945年)8月の敗戦後、日本を占領した連合国軍の最高司令官総司令部(GHQ)は、教育勅語の朗読と神聖的な取りあつかいを禁止しました。ついで占領下の日本の国会では、昭和23年(1948年)6月19日に衆議院が「教育勅語等排除に関する決議」を、参議院が「教育勅語等の失効確認に関する決議」を決議し、それに代わるものとして、教育基本法が制定されました。

教育基本法の第二条には、次のように日本での教育の目標がうたわれています。しかし、

今の教職者や生徒・児童は、この文言を暗誦して常に朗唱し、実行を誓っているのでしょうか ? 

教育基本法 第二条

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

 <ことば豆辞典> その二

井上 毅 1844~1895。熊本藩士。明治政府の司法省に出仕。フランスに留学。国学にも通じ、伊藤博文と共に大日本帝国憲法や皇室典範、教育勅語の起草に参加し、のちに文部大臣となる。
元田永孚 1818~1891。熊本藩士。儒学者。明治政府の宮内省に出仕。宮中顧問官となり、
教育勅語の起草に参加。
詔 勅 天皇が意思を表示する文書。詔書(しょうしょ)と勅書(ちょくしょ)と勅語がある。

副 署 明治憲法下で、天皇の文書的行為の場合、それを助ける任にある者が天皇の名に添えて行う署名。
四大節 1945年まで行なわれた四つの祝日。四方拝(しほうはい・一月一日)・紀元節(きげんせつ・今の建国記念の日)・天長節(てんちょうせつ・今の天皇誕生日)・明治節(めいじせつ・明治天皇の誕生日、今の文化の日)。
【修 身】 道徳を実行し徳性をみがくことを目的にした旧制の学校の教科目。第2次大戦後廃止。




儒教道徳は、古代中国の聖人、孔子(こうし)・孟子(もうし)の言行録に基づいています。また、西欧諸国の倫理道徳は旧・新約聖書に由来しています。洋の東西を問わず、道徳規範というものはただ法律として作ればよいものではなく、何か聖なるものに基づいてこそ意義あるものとなり、さらにこれを繰り返し朗唱することによって、自発的に守る心を持つようになるものと思いますが、あなたはどのように思われるでしょうか





出典 http://chusan.info/kobore8/4132chokugo.htm