スズキのフライフィッシング |
1.はじめに | ||
ここでは、河川でのマルスズキのフライフィッシングをご紹介したいと思います。 マルスズキは、砂浜、港湾、河口や河川内などあらゆる場所で釣れる身近な魚です。私が主に釣っている場所は、河川内の汽水域から淡水域にかけてのフィールドがメインです。今回は、河川内、特に淡水域でのマルスズキのフライフィッシングを簡単にご紹介します。
フライフィッシングのラインは、他の釣りと比べると、ラインが極端に太いものを使います。 その為、河川でフライフィッシングをしようとすると、流れの影響を受けやすいという特徴があります。 この流れの影響が釣りにプラスになったり、マイナスになったりします。 流れを読み、流れをうまく利用できればいい釣りができるでしょう。 そうでない場合は逆の結果が出ます。 そのような川釣りの楽しさと、魚のサイズの大きさ、フッキング後の魚の引きやスズキのエラ洗い。ダブルハンドロッドを使っての遠投の快適さ。フライフィッシングで狙う川のスズキ釣りの魅力はいっぱいあります。 |
2.河川での釣りを始めたきっかけ |
初めて9フィート#8の竿を買ったのは、マルスズキを釣るためでした。自宅近くの河口や、港に夕方から夜にかけて通い続けました。しかし、夜釣りで釣れたのは、30pのセイゴぐらいでした。 当時、会社のなかに、ルアーのスズキ釣りが好きな人がいまして、時期になれば出勤前のヒラスズキ釣りを一緒にしていました。その人から河川のスズキがいいので一緒にしないかと誘われ、ある休日の早朝、ルアーで川に行きました。 釣り方は、ルアーを対岸に投げ、流れのなかを扇状に横切らせるというものでした。 川の上流から少しずつ下りながら探って行きます。2つの流れが合流し、ひとつの流れになっているポイントがあり、上流域であればヤマメが出てもいいような流れです。合流点より少し上流に立ち、ダウンクロス気味にルアーを投げ、ゆっくりとルアーを引いて行きます。 すると、いきなりルアーをひったくるようなアタリがありました。 すかさずアワセを入れると下流に勢いよく走り出しました。魚が止まった所でエラ洗いが2、3回、そしてバレてしまいました。同じポイントにもう一度投げるとすぐにヒット、同時にエラ洗いでまたバレてしまいました。これが河川での初めてのスズキ釣りでした。 これならフライフィッシングで釣れるかも知れないと思い。ヒラスズキで使っていたタックル一式を河川に持ち込み数回釣りに行きました。 後からルアーで下ってくる会社の人には釣れるのに、私のフライにはアタリすらありませんでした。 ヒラスズキがフライで釣れて、マルスズキがフライで釣れない筈がない。どうもフライの流し方が悪いのではないかと考えました。川幅が広い場所で、強い流れの向こう側を釣ろうとすると、急激なドラッグがかかりすごい勢いでフライが動いている。 フライも、もっと目立つように大きくして見たらどうだろうか。などといろいろ考えました。 その頃、たまたまある雑誌でサーモン釣りの記事を読みました。長いダブルハンドの竿にシューティングヘッド、ダウンクロスにフライを投げ、川を下りながらポイントを探って行く。これだ!川のスズキ釣りに使える。そう思いました。 ダブルハンドの竿を買い、次の年の5月、ダブルハンドロッドの初釣りで、運良くはじめてのマルスズキを釣ることが出来ました。 |
3.フィールド |
宮崎の河川下流部は平野部を流れ海に流れ込む為か、一部河川を除き比較的浅い河川が多いです。また、砂利もしくは、ごろたの河川が多く、河口近くの下流域まで瀬がある河川が多いのが特徴です。 それは、川底の変化も分かりやすく、ポイントが絞りやすいともいえます。これは、フライフィッシングにとっては大変好都合な部分でもあります。 宮崎の河川も他の地域同様、下流部に堰やダムがある河川がほとんどで、河口から最下流部の堰やダムまでの区間が川スズキのフィールドとなります。 河川の大小にかかわらず、大抵の河川には、スズキが川を上るようであります。時には、用水路のような小さな流れでもスズキが釣れる事がある位です。 大河川になればなるほど、釣果は安定しているようで、小河川になればなるほど時期やある条件がそろわないと釣れないように感じています。しかし、小河川は、ポイントが絞り易く、時期や条件さえ揃えばフライで狙うには大変狙い易いフィールドであります。 特に私が好んで釣行するのは、潮の影響の全く無い淡水域です。 |
4.時 期 |
スズキは、春から秋にかけて河川のかなり上流部まで上ってきます。 下流部に堰などの障害物が無い場合、数十kmも川を上ることがあるようです。春、アユが遡上を始める頃からが川スズキのシーズンです。しかし、シーズン初期のスズキは未だ痩せていて、あまり引きも強くなく元気がない個体が多いのが特徴です。 これが、5月下旬頃になると川魚を飽食し、丸々と太ったスズキが多くなります。こうなると元気が良く、エラ洗いも見せてくれます。 特に梅雨時期が河川での最盛期であります。 大きい河川では、産卵のため晩秋から冬にかけ川を下るといわれています。 |
5.道 具 |
ロッドは8番以上のものを使用しています。流れが単調で川幅が狭い場合は、シングルハンドロッドで十分ですが、川幅が20m以上で流れが複雑だったり、流芯の向こう側を狙いたい時などはでは、ダブルハンドロッドが断然有利となります。 また、川原が狭く、バックに葦などが迫っている場所などもダブルハンドは有利です。
リールは、ロッドとのバランスがとれたもので、使用するラインを十分巻けるものであればどんなものでも構わないと思います。
ラインは、シングルハンドロッドの場合は、ST、9フィートのタイプTにフローティングのランニングライン、ヒラスズキのタックルをそのまま使っています。 ダブルハンドロッドを使用する場合は、遠投性を重視し、DTのタイプTを12〜13mにカットし、ヘッド部とし、それにモノフィラのランニングラインを接続しています。 このヘッド部の長さは重要で、長さが短くなればなるほどフライを流すのが容易になりますが、フライの飛距離は落ちます。長さが長くなれば飛距離は出ますが、フライの流し方が難しくなります。また、ラインの比重によっても最適な長さが変わってきます。 たとえば、フローティングラインが13mでちょうど良いロッドにインターミディエイトラインを使用すると13mだとちょっと重くなります。 自分の良く行く場所、使うロッド、その人のキャスティング能力によって設定が変わってくるので自分で快適な釣りが出来るような設定を見つけてください。 ラインの先には−2〜−4Xのテーパーリーダー、その先に0X程度のティペットを50〜60cm付けています。 バッキングラインは、100mもあれば十分でしょう。
フライは、早い流れの中でも安定した姿勢で泳ぐストリーマーパターンなら何でも良いでしょう。 私の場合は、#1/0以上のワイドゲイプのフックにデシーバータイプのフライを多様しています。本来は、海のパターンなのでしょうが、流れの中でもゆらゆらと泳ぐ姿は、なかなかのものです。 またフックは、淡水での使用のみでしたらバスバグフックはサイズの割にゲイプが広く、また軸が細く軽く出来ているので大きいフライを巻くのに適しています。 増水時の水中でも目立つように、シルエット全体のサイズは大きいものでは10p以上のものを使うことがあります。ルアーのサイズからするとちょっと小さいようですが、今のところ10cm前後のサイズを多様しています。 色は、とりあえず自分の好みの色でいいと思います。自分の自身のあるフライを見つけてください。ちなみに、私の場合は、黒のデシーバーのみ。過去には白、青、赤、緑、黄などいろいろ試してみましたが、どれも同じように釣れました。 今のところこれがすごく釣れるというパターンも色も見つけていません。 |
6.ポイントと釣り方 | ||||||||||
河川中、下流域は緩やかに蛇行し川幅が狭まったところや直線に流れているところは流れが早く、瀬が出来ています。 瀬は比較的浅いことも多く、川を上る魚は、この早い流れが障害になると考えられます。 このような障害になるものの下流には、これから川を上ろうとする魚が溜まっていることが多く、スズキにもいいポイントとなります。 特に、中州の下流などの流れが合流する所や、支流の流れ込みなどの合流点などは、餌となる魚が多いためか、スズキが多数溜まることがあります。(図1) その他、早い流れの瀬の流芯、淵尻、淵の反転流などいろいろな場所でスズキのボイルを見かけます。しかし、フライで釣り易いポイント、スズキのボイルがあってもなかなかフライで釣れないポイントがあるように感じています。 傾向としては、早い流れほど釣り易いような気がします。 緩い流れの魚は、餌を求めてうろうろしている為か、ボイルしているのになかなかアタリが無いという事がほとんどです。 早い流れの魚は、ある場所に定位して、近くを通る魚を追いかける為でしょうか、定位しているであろう場所にフライを送り込むように流せばかなりの確立でアタリがあります。
瀬を中心に探る 私の場合は、瀬を中心に探って行きます。なぜかというと、瀬には、活性の高いやる気満々のスズキが多いこと、フライを流し易いことなどがあげられます。 ダウンアンドクロスで 釣り方は、ダウンアンドクロスという方法で川を探って行きます。簡単に言えば、対岸の下流側にフライを投げ、流れの中をゆっくりと横切らせて行くという方法です。ひと流しごとに下流に少しずつ移動しながら探って行きます。 なぜシューティングヘッドを使うのか
普通のライン(たとえばWFやDTライン)を対岸に投げ、ラインを水面に落とすと手前の流れにラインをとられてしまいます。 そのままだと図2のようにライン先行で流れてしまいます。 フライラインは先端が細く途中が太くなるためその部分の水の抵抗が大きいからです。 図1の1番〜5番の間、フライはラインに引かれすごい勢いで移動しているはずです。 たとえ魚がフライにアタックしてきてもフッキングは難しくなるでしょう。 6番の状態になりようやく魚がフッキングできる状態になります。 こういう状態を回避するためにフライラインの途中を上流側にメンディングをし、強くドラッグが掛かるのを防ぎます。 しかし、近距離であれば修正可能ですが、これにも限界があります。 フルライン近く出したラインをメンディングで修正するのはとても無理なのです。しかもシンキングラインとなるとなおさらです。 そこで考えられたのがシューティングラインによる釣り方です。 同じように対岸下流側に投げます。 そして、竿を立て、ランニングライン部分を水面上に出し、流れの影響を受けないようにするのです。 すると、図3のように、フライは理想的な流れをする筈です。 この状態で、流れれば1〜5番までの間、いつ魚がアタックしてきてもフッキングに持ち込み易くなります。 ダブルハンドとシューティングシステムで流芯の向こう側もらくらくドリフト このシステムで釣りをすると、流れが単調で流芯が対岸にある場合では、キャスティングした後は竿を持っているだけでフライがうまく流れ、魚が釣れてしまいます。 逆に、フライフィッシングをしていて難しいポイントのひとつに、強い流れの向こう側があります。 ヤマメのドライフライやウエットフライでもそうですが、手前の強い流れにラインをとられてしまいフライがうまく流れません。こういった場所でもダブルハンドの釣りでは比較的容易に対処できます。 こういう場合は図4のようにポイントの上流に立ち、下流の流芯の向こう側にSTのヘッド部すべてを着水させます。流芯の向こう側のスペースが狭くラインすべてを流芯の向こう側に着水できないときは、なるだけ上流側に立ちます。 これは、ラインが強い流れになるだけ乗せないようにする効果と、ラインよりフライをなるだけ下流に着水させるためです。こうすればラインがフライを追い越すまでの時間が稼げます。 更に、ラインが流芯にとられ急激にドラッグが掛かる場合にはキャスティング後早めに(図4の2番の段階までに)竿を上流側に起こし、ラインを修正しておきます。 川の流れは、その時々によって変わります。また、ポイントに立つ位置や、フライを落とす位置によってもラインの流れ方が変わってしまいます。思ったポイントに理想的な速さでフライを流す為にはいろいろな竿さばきがあります。 ここでは、細かいことは書きませんでしたが、釣り場でいろいろ試してみてください。そのポイントのその時々の、理想的な流し方が見つかる筈です。 フッキングと魚とのやり取りアタリは、突然ゴンと重くなります。ほとんど向こう合わせの釣りになります。コツコツとラインを引き込む小さなアタリがある事がよくありますが、こういう場合にアワセを入れても大抵空振りに終わってしまいます。 コツコツと竿にアタリが出て合わせている間にフライを吐き出しているか、咥え損なっているからだと考えられます。こういう場合には、アワセに神経を集中させるより、フライの流し方に神経を使った方が早道です。 フライがゆっくりと流れているか、テンションが掛かり過ぎていないかなど点検してみてください。場合によっては、立つ位置を変えるだけで簡単に釣れてしまう場合もあります。 フッキングした魚は、ほとんど下流に走ります。流れを利用して一気に流れを下るので、結構引きます。手元のラインを魚の走りに合わせ出して行きます。早く取り込むためには、竿を下流に倒して釣り人が下流に移動しする事です。 魚より下流に回り込めれば、魚は上流を向くので、川の流れを利用し走ることは出来ません。 手前の浅瀬に来ると魚は再び暴れだすでしょう。こういう時は無理に引っ張り上げようとせず、魚が止まるのを待ちます。そして、魚が一瞬止まったら、竿とリールを使い一気に浅瀬に誘導します。 |
7.最後に |
この釣りを初めて経験した時は、感動しました。 いつもは、せいぜい40p以下の淡水魚しかいないエリアなのに、ある時期になると60cm以上の海の魚が釣れるなんて信じられなかったからでした。しかも、流れがある為非常に良く引きます。近くの身近な川でこんな釣りが体験できるとは思っても見ませんでした。 身近な川で経験できる釣りではありますが、ウエイディングには十分気をつけてください。 特にこの釣りは梅雨時期を中心に好機を迎えます。大雨の増水時または、その直後の釣行は特に注意が必要です。いつも通いなれた場所でも増水により地形が変わってしまう事があります。今まで浅かった場所も急に深くなっていることがあります。 川の流れは見た目より重い場合もあります。 深くウエーディングすればそれだけ体に受ける水の抵抗も大きくなります。膝まで浸かって平気な流れも腰近くまで浸かると上流に移動するのが困難になります。 こういう経験がありました。手前の浅い流れを渡り、中州の下流をウエイディングし、釣りをしながら下流に移動していました。ついつい腰近くまでウエイディングしてしまい。気が付いた時には水の抵抗で上流に帰れなくなってしまいました。 そのまま岸に戻ろうとしたのですが、途中、水深が胸近くまであり、ピョンピョン跳ねながらやっとの思いで岸にたどり着いた事がありました。 上流にダムがある流れも注意が必要です。 ダムの放水による増水に十分注意する必要があります。雨上がりの夕方とある河川に釣りに行ったときでした。河原に車を止め、川で釣りをしていたのですが、釣りの途中でダムの放水が始まりました。 徐々に水かさが増し、かなり高い位置に車を停めていたのですが、釣りを終え車に戻って見ると車の周りは水浸し、4WDの大径タイヤの半分以上水に浸かっていました。 こういう時に中州などに渡っていればどうなっていたでしょうか。時として釣りをあきらめる勇気も必要であることを痛感させられた経験でした。 くれぐれも事故のないように釣りを楽しんでください。 |