ヒラスズキのフライフィッシング




1.はじめに

 フライフィッシングでのヒラスズキ釣りを始めて2003年でもう7、8年ぐらいになるでしょうか?ここでは、私の磯でのヒラスズキ釣りを簡単にご紹介しようと思います。
 これからヒラスズキのフライフィッシングに挑戦しようという方のヒントになれば幸いです。

ヒラスズキを狙い始めたきっかけ

 いつもの6番ロッドにウーリーパッカー10番をつけ、釣りを始めたのですが、数投した時、フライがサラシの中に入りました。その時ガツンと大きなアタリがありラインが沖に向けて走り出したのです。ラインがどんどん引き出されバッキングラインが少し出たあたりでその魚は止まりました。

 2〜3mまで魚を寄せたところで魚がエラ洗いをし、「アッ」と思った瞬間にラインのテンションが無くなってしまいました。これが初めてのヒラスズキとの出会いでした。

 そんな偶然の出来事があり、本格的にヒラスズキを磯に狙いに行くようになりましたが、フライでヒラスズキを狙っている仲間もいなかったし、ヒラスズキの好期がいつかと言う知識さえもありませんでした。全くヒラスズキに関する情報が無いまま、手探りの釣りを始めたのです。

こんな状態でこの釣りを始めた為、最初の1匹を釣り上げるまで1年近くかかったと記憶しています。

 その1匹を釣り上げてからは、休日はもちろん出勤前の釣行を中心にヒラスズキ釣りにはまりました。なぜかというと、時期になれば宮崎周辺の磯では、ヒラスズキの魚影が濃く、条件さえ揃えばかなりの確立で釣りが成立するからです。

 釣り場まで30分以内で行け、早朝の1時間程度の釣行で釣れる。しかも相手は大きい。こんな相手を放っておく手はないでしょう。

ヒラスズキのフライフィッシングはそう難しくない

釣り風景

 ヒラスズキのフライフィッシングは、決して難しくありません。海のフライフィッシング全般にいえる事ですが、基本的には、投げて引くだけ。

 正確にフライを投げる必要性もヤマメ釣り程高くはないし、難しいラインコントロールや、高度なドリフトのテクニックが必要になる場面もそう多くはありません。

極端な話をすれば、遠投が出来なくても釣りになります。

 多少の慣れは必要でしょうが、渓流のフライフィッシングを普通にしている人なら十分やって行ける釣りだと思います。




2.ヒラスズキのフィールド

フィールド

日南海岸の磯

 宮崎県のヒラスズキのポイントは県北部〜県南部にかけての磯、浜、河口付近、港内など様々な場所で釣れています。

 そんな様々なフィールドの中で、私が好んで通っているフィールドは宮崎市内南部〜日南市にかけての磯です。

 通称「鬼の洗濯板」と呼ばれる波状岩でできている比較的なだらかな磯が主で、障害物も少なくキャスティングに必要なバックスペースも十分とれます。

 また、足場が低く比較的安全な場所も多く、一般的にイメージされているような波をかぶり、危険なイメージの釣りとはちょっと趣きが違ったフィールドでもあります。

 また、この付近は、冬場の季節風の影響も少なくフライフィッシングをするには快適な場所です。




3.ヒラスズキの好期

時期

 私の経験からは、宮崎周辺での磯のヒラスズキの好期は、例年10月頃から翌年の4月ぐらいではないかと思っています。

 その中でも特に、11月上旬〜12月頃、2月下旬〜4月頃。この時期にいい釣りが出来る事が多いように思います。

 ヒラスズキに限らず大抵の魚は、産卵前の荒食いがあり、好期を迎える事が多いようです。

 ヒラスズキの産卵は地域差が大きいそうで、北に行くほど産卵時期が早く、産卵期間が短い。逆に、南に行くほど産卵時期は遅く、産卵期間は長いそうです。ですからヒラスズキの好期は、地域によってかなり違ってくると思われます。

 宮崎周辺では、例年4月頃まで卵を持った個体が釣れる事からそれまでの時期が大体の産卵時期ではないかと推測しています。

時間帯

 大抵の魚は、まずめ時に良い釣りが出来るのと同様、ヒラスズキも、まずめ時が良いように思います。

ヒラスズキ

アベレージサイズのヒラスズキ

 早朝は、魚が浅瀬に出ている事も多く、特に50〜60cmクラスの魚は、群れでいるためか数釣りを楽しめる事もあります。

 気象条件や海の状態にもよりますが、早朝以外の昼間の時間帯でもヒラスズキを釣る事は出来ます。

 昼の時間帯は、大型の魚が出にくいかというと、そうでも無さそうです。私の記録魚となった90pの魚は昼近い時間帯でしたし、80p台の魚の半数以上は、昼間の時間帯で釣っています。

 磯での夜釣りについてですが、ほとんどやっていません。ルアーをする人のなかには夜の方が良く釣れるという人もいますが、暗い磯でのトラブルを考えると余りお勧めできません。




4、タックルについて

 どんな釣りでもそうだと思いますが、特にフライフィッシングにおいては、各タックルのバランスが特に重要になります。

 快適に釣りをする為には、ロッド、リール、フライライン、そしてフライ。このバランスがどれかひとつでも大きく崩れると快適な釣りが出来ない事になってしまいます。

 そのバランスの範囲は、釣り人の技術の程度によっても多少は違って来るでしょう。

ロッド

 まずはロッドですが、8番以上のロッドであれば問題無く使用できると思います。ロッドの長さは、  8フィート半から9フィート位が使いやすいかと思います。

 ロッドは、特に海用のもので無くても機能的には何ら問題は無いと思います。ただし、ロッドによってはリールシートなどが海水に弱いものがあるので注意が必要です。

 最近のソルトウォーター用とうたっているロッドはリールシートやガイドなどが錆びに強い素材が使われているようで、海水でも安心して使えそうです。またバットが強く作られているものが多く、大型魚とのファイトでも安心して使えると思います。

 私がメインで使用しているロッドは、9フィート8番です。アベレージサイズ(50cm〜70p)にはちょうど良い感じです。

 ヒラスズキは、ヒットしてもそんなに走る魚ではないし、根に潜ってしまうこともありません。場所にもよると思いますが、大型の魚でも8番ロッドで十分取れると思います。

 大型魚は、魚が弱っても流れがあるところでは水の抵抗でなかなか寄せられないと言う事があります。魚のリリースの事を考えれば、なるべく高番手でバットの強いものがお勧めです。

リール

 機能的には、フライラインとバッキングラインを50mほど巻けるリールがあればどんなリールでも構わないと思います。スズキは、そんなに走る魚ではないのでクリックブレーキのリールでも問題はないと思います。

 決して高級なリールは必要だとは思いませんが、ロッド同様、リールも錆びに強い部品を使っているものがお勧めです。

フライライン

 本来は釣る場所によってラインを交換するのが理想なのでしょうが、ラインを1本に絞るならWFまたはSTのタイプTをお勧めします。

フローティングラインでも良いのですが、波の影響を受けやすくリトリーブがしにくい。それ以上沈むラインは浅いポイントでは油断するとすぐ根掛りしてしまいます。

 また、ヒラスズキは、自分より上を通過するものに良く反応するようなので、フライを沈めすぎるのは良くないと考えています。

 私の場合は、STラインのタイプTに、フローティングのランニングラインを使用しています。

STラインを使っている理由は、WFラインよりすばやくキャストを行えるという利点だけからです。もちろん、WFより飛距離もでますが、磯のヒラスズキ釣りではそんなに遠投が必要なシーンは少ないと思います。

 バッキングラインは、100mも巻いていれば十分でしょう。

 フライラインの先は、市販のテーパーリーダー9フィートの0〜−1X、その先に0Xのティペットを50〜60p程度というところが標準でしょうか。

私の場合は、12号程度のモノフィララインを100〜150p、その先に0X(約3号)のティペットに20〜30lbのショックティペットを40p程度つけています。

ショックティペットは根ずれ防止もありますが、フックとラインの結束強度を保つという意味合いが強いです。ですからあまり長くは取りません。

フライ

 フライは#2〜#1/0サイズのステンレスフックに巻いたストリーマーを各種使っています。ヒラスズキの口の大きさからすると、もう少し大きいフックを使用した方がいいのかも知れませんが、ロッドが8番なのでロッドとのバランスの関係上、今のサイズに落ち着いています。

 シルエットの大きさは、7〜8p程度のものを使用しています。ルアーからすると随分小さいようですが、ヒラスズキは、大きい魚ばかり食っている訳ではないので、自分のタックルとのバランスを考えサイズを決めた方がいいのではないかと思っています。

 フライパターンですが、とりあえずは、自分の好みのストリーマーでいいと思います。これが絶対にいいというパターンは今のところありません。前述のように小さいウーリーパッカーのようなパターンでも釣れるし、クレージーチャーリーのようなパターンでも良く釣れます。

 個人的には、デシーバータイプのフライが好きで、使用頻度が多かったのですが、最近は耐久性やキャスト時のテールの絡みが少ないパターンを使用するようになりました。

 具体的には、フィッシュヘアーで巻いたストリーマー、キャンディーフライ、シリコンフライなどを状況に応じて使用しています。その他お勧めは、ラビットスキンで巻いたゾンカーパターンなどです。

 フライの色についてですが、私は、特に意識はしていません。フライボックスに入っているのは黒、黒/白、青/白、赤/白ぐらいです。

デシーバー フィッシュヘアーストリーマー
デシーバー フィッシュヘアーストリーマー

その他道具

 その他道具で特に必要なのは、ラインバスケットです。磯は、足元にラインを置くと、カキ殻などにひっかっかりラインを傷める可能性がありますし、ラインに砂などが付着し、ロッドのガイドを傷めることもあります。

ラインバスケット
ラインバスケット

また、足元を波が洗うとラインが流され釣りになりません。移動しながらの釣りが多いので、ラインを足元に落としていると移動も面倒です。

私の磯釣りでの必需品です。 

 ラインバスケットには色々なタイプがありますが、底 がフラットなものより写真のような底に凸部があるようなタイプのほうが、ラインが絡みにくく使い勝手がいいようです。

ラインバスケットは、最初使いにくいかも知れませんが、慣れれば苦になりません。




5.ポイントおよび釣り方

ポイント

 ポイントとしては、一般的に言われているように、サラシの出来るところがポイントとなります。しかし、サラシの出来る場所すべてがポイントになる訳ではありません。

特にサラシが常に消えず、沖に向かって深い溝が出来ている場所、しかも、払い出す流れがある場所はヒラスズキがいる確立が高い一級ポイントです。

 サラシが時々しか出来ない場所でも、深い溝や岩のえぐれなど、魚が隠れる場所があるところはヒットの可能性があります。そういう場所では、なるべくサラシが出来たときにキャストします。サラシの無いところでは、フライの近くまで魚が浮き上がってきても、そのままUターンしてしまうことが多いようです。

 また、大きなサラシばかりでなく、ちょっとしたサラシがポイントになることもあるので、最初は色々な場所を叩いて回る方が、ヒラスズキの着き場を探るうえでためになるかと思います。

 ポイントを探す上でお勧めなのが、ベタ凪の昼間の干潮時に、磯を回ることです。海の底の地形が良く分かり、今後釣りをする上で大変参考になると思います。何でこんな所で魚が釣れるのだろうかという場所も、後で理由が分かることもあります。

釣り方

 ポイントに立ったら、足元から沖に向かって探って行きます。ひとつのポイントを一通り探ったら次のポイントへ移動しながら釣り歩いて行きます。小さい魚ほど群れでいるようでひとつのポイントで数匹以上釣れることもあります。

 キャストは、波がくる状態を見ながら行い、なるべく波が来る合間にリトリーブが出来るようにします。フライラインは太く、波の影響を受け易いからです。

 また、フライを投げるポジションの取り方やリトリーブの速さなどによって、フックアップできる確立が随分違ってきます。

 リトリーブスピードは、波や水の流れに応じて行います。流れに対して逆引きになる場合はゆっくりと、その逆の場合は、流れに負けない速さで引くのが理想的です。

ラインに対して真横方向からの波ではドラッグが強くかかり、フライが早く動きすぎる為か、ラインテンションが強くかかる為なのか、たとえ魚が出てもフックアップまで至らないことが多いです。

また、ラインを投げた方向から波が来る場合は、ラインが緩みがちになり、アタリがとりづらい状態になります。こういう場合は、なるべくラインにテンションが掛かる状態を保ってください。こういう場合は、ツーハンドリトリーブ(竿を脇にはさみ、両手でラインを手繰るやり方)も有効です。

 フックアップの確立が良い理想的なポイントとしては、沖に向かって一定の流れが出来ているところです。こういうポイントは、ダウンからダウンクロス気味にフライをキャストし、比較的ゆっくりとリトリーブします。

 逆に確立の悪いポイントは、常に波が打ち寄せる、駆け上がりのきつい磯際などです。

水の流れが複雑で、しかも一定でない為、リトリーブやラインコントロールでフライの動きをコントロール出来ない事も多く、魚がフライにアタックしてきてもフライをくわえきれずフックアップ出来ないことが多いです。

 リトリーブ中は、なるべく竿先を水面に近づけ、ラインと竿がまっすぐにします。これは、リトリーブ中のラインの弛みを最小限にするために有効です。また、後に述べるフックアップにも有利に働きます。

フッキング

 アタリは、突然ゴツンと手元にきます。次にググッと首を振るような振動がラインに伝わって来ます。この時に、竿をあおってアワセを入れず、ラインを1〜2回手繰り、リトリーブでアワセを入れます。(ストリッピングストライク)

フライロッドは、ルアーロッドに比べて穂先がやわらかいのと、ラインが太く抵抗が大きいので、竿の力だけでフックアップすることが難しいようです。この方法を用いればかなりファイト中のバラシが減ると思います。

魚とのファイト


ファイトシーン
 フッキングがうまく行くと、いよいよ魚とのやり取りです。

アタリの後、少し間があいて、魚が走り出します。手元のラインを絡まないように送り出して行きます。魚が余り走らない場合は、手元の余分なラインをリールに巻き込みます。

手元のラインが無くなればいよいよリールファイトの始まりです。

 ヒラスズキは、根に潜ろうとはしませんが、溝や岩に沿って逃げようとします。そのような場合は、岩などの障害物にティペットが擦れないように竿を立て、魚を浮かします。走りが止まればエラ洗いをするでしょう。

ルアーでは、エラ洗いの時にルアーが外れないように、竿を寝かせたりするそうですが、フライフィッシングでは、フライの自重があまりないので、竿を寝かす必要は余りないと思います。魚が走ればラインを出し、止まればリールを巻きます。

 魚が弱ってきたらいよいよランディングです。魚は、引っ張られる方向とは、逆の方向に走ろうとします。その性質を利用して、取り込みやすい場所に誘導します。

取り込み場所と反対側に竿を倒すと、思った方向に魚が泳いでくれます。ランディングで慌てない為にも、あらかじめランディングし易い場所を考えておきましょう。

 もし、リリースするのであれば、魚へのダメージを最小限にするために、水中でキャッチするのが理想的でしょう。魚を持つ時は、口に指を入れ下あごをつかみます。

 魚の身体に触れるのは、なるべくしない方がいいと思います。短時間、手で触れるだけでも後々鱗が取れ火傷のような状態になり死んでしまうという報告もあります。

写真を撮るために魚の腹に手を当て、魚を持ち上げることがありますが、こういった短時間のことでもダメージが大きくなることが考えらるそうなので、注意が必要です。



6.最後に
 ここでは、ごく簡単な説明に留めておきました。細かい事を書けば切がないし、これからヒラスズキ釣りをする人が、実際に釣りに行き、試行錯誤しながら楽しんで行けばいいのではないかと考えたからです。

 釣りは人それぞれ好みもあるでしょうから、私の道具、釣り方が必ずしもベストでは無いと思います。いち釣り人の私見で書いているので、あくまで参考程度にとどめておいてください。

 また今は、書籍やインターネットなどたくさんの情報がありますが、情報や固定観念にとらわれず、色々と試行錯誤しながら自分の釣りを楽しんでください。新しい経験や、発見をするのも楽しいものです。