ヒラスズキ フッキング率を上げる為の考察


1.はじめに

 「ヒラスズキのフライフィッシング」では、磯のヒラスズキ釣りはそう難しくないと書きました。

 しかし、矛盾するようですが、難しくは無いけれども簡単でも無いのです。全く単純な釣りであればきっと飽きてしまってヒラスズキ釣りにこんなにのめり込む事は無かったと思います。

 ヒラスズキ釣りの楽しみを数回に分けて書いて行きたいと思います。

 今回は、ヒラスズキのフッキングについて考察して見たいと思います。

 以下に述べる事は、あくまで考察と言う事でご了承ください。


1.フッキングの悪いヒラスズキ

 磯のヒラスズキをフライフィッシングで狙うと、魚は出るがなかなかフッキングしないという事を必ず経験すると思います。

 フライフィッシングで、ヒラスズキを狙い始めた頃は魚はポンポンとフライに出てくれるのですが、なかなかフッキングしない。5匹も6匹も魚が出るのに1匹もフッキングしない。やっとフッキングさせても、ファイト中にばれてしまう。こう言う経験をよくしました。

 大抵は、コツっとした僅かな感触だけで終わってしまう事がほとんどです。

 フライを小さくして見たり、大きくして見たり。リーダーの長さを変えて見たり。リトリーブの方法を色々試して見たりと散々色々と試して見ましたが、今の所決定的な打開策といったものは出てきていないのが実情です。

 多くの釣行の中、経験的にフッキングのいい場所や状況がある事に何となく気付いてはいました。

 決定的な打開策とは行かないまでも、フッキングしやすい状況を積極的に釣り人側からつくって行けばフッキング率は少し向上するのでは無いかと考えました。


2.フッキングの悪さの理由

 このヒット率の悪さ、決してヒラスズキが餌を捕るのが下手な訳ではないと思います。自然のえさを捕食する時は、多分ここまで食い損ねる事は無いだろうと思います。

 まず本物の餌とフライ、どこが違ってこのような捕食の差が出るのだろうかと考えて見ました。

 小魚などの自然のえさとフライとのもっとも大きなな違いは、糸が付いているか否かというところにあると思われます。もっと正確に言うと、自然の生きた餌は、自分の力で動いているのに対して、フライは糸に引っ張られて動いています。

 この違いが、自然の餌とフライに対する捕食の差になって出ているのではないかと推測して見ました。

 マルスズキでしたが、小魚を捕食するシーンをテレビで見た事があります。大きな口を開け一瞬で魚を食べてしまいました。食い付くというより、水と一緒に吸い込んでしまうといった捕食の方法です。ヒラスズキも同様の捕食方法をとっていると思います。

 この捕食の瞬間に、フライに付いた糸が引っ張られたとするとどうでしょうか?ヒラスズキの捕食して来る方向にもよると思いますが、すっぽり口に吸い込まれる筈のフライがうまい具合に口に入る可能性はかなり低くなると思います。

 また、いままでヒットしたヒラスズキは、リトリーブとリトリーブの一瞬の間にヒットしてるといったパターンが一番多いような気がします。

 この事からも、ラインに強いテンションが掛かっている時には、自然の状態とは違うフライではなかなかフライを吸い込みきれていない、もしくは、違和感を感じたヒラスズキが一瞬にしてフライを吐き出しているのかどちらかでは無いかと思われます。

 しかし、フライは動かないと魚は反応しません。糸にテンションが掛かるとヒットしにくい。この二つの矛盾する事がヒラスズキのフッキングを難しくしているのではと思っています。

でも、ベストな状態は無理でも、よりベターは方法は有る筈です。

 スズキが、フライを吸い込み易い状況を作る為にはどうすればいいのでしょうか?

次に私が心掛けている事を数点お話したいと思います。




3.フッキングを上げる為に

 魚が付いているであろう場所を想定し、水の流れを読み、フライを打ち込むポイントを決める。そして、ラインの動きやテンションを見ながらリトリーブを調整する。といった一連の行動が解決してくれると考えています。

 フッキングし易い方向からフライを食わす

 川の流れの中のストリーマーフィシングでも心掛けている事なのですが、フライの横方向から捕食をさせるというのが理想的だと考えています。

 横から捕食させる利点は、次のような事が考えられます。

 ひとつ目は、後ろからの捕食よりもラインのテンションの影響を受けにくい事です。

 魚がフライを後ろから吸い込もうとしている時に、フライを反対側に引っ張ると上手く口の中に吸い込まれる確立は自然の餌に比べて断然低くなると思われます。

 ところが、横方向からの捕食の場合は、上記の場合よりも糸のテンションの影響を受けにくいと考えられます。

 ふたつ目は、合わせを行う時に口に対して横方向に引っ張るので、口からフライがすっぽ抜ける可能性も少なくなると考えられます。

ファイト中にバレずにキャッチ出来たヒラスズキの口の横にフックが刺さっている事が圧倒的に多い事からも想像できます。

 たまにフライの後ろを追ってくるヒラスズキの姿を見る事がありますが、大抵コツリと一瞬小さなアタリがあるだけで終わってしまうことが多いのも事実です。

 

図−1.横方向からフライを食わせる理由

 では、どのような方法でフライを横から食わす事ができるのでしょうか?

 磯でも波によって流れが出来ます。

 そこで、流れに対してダウンクロス気味にフライを投げ、流れの中をゆっくりと横切らせる方法をとります。ちょうど川の流れの中のストリーマーやダウンクロスのウエットフライの釣り方と同じ方法を磯でもやってしまおうと言う事なのです。

 こうする事で流れにたいして横切るようにフライが流れる筈です。魚は水が流れて来る方向を向いている可能性が高いので、必然的にフライの横を見ることになると思われます。

 フライの操作

 ヒラスズキ釣りでのフライの動かし方は、比較的ゆっくりと動かすのが基本だと思っています。

 しかし、磯では波立った日が好条件のヒラスズキ、磯の流れは波によってめまぐるしく変化します。流れの強弱だけでなく、方向も変わります。

 当然状況によって、フライの操作を変えて行かなくてはいけなくなって来ます。

 基本的には次のような方法をとっています。

 まず、魚が付いている場所を想定します。そして、そのポイントに直接キャストするのではなく、そこにフライを運んでくれる流れを見ます。波と流れの状態を見て、流れの上流側にタイミング良くキャストします。

状況が許せば、流れに対してダウンクロス気味にキャストします。

 流れが速い時は、投げてからすぐにリトリーブはせずに、ラインを保持し、フライが流れの中をゆっくりと横切るようにターンさせて行きます。流れが速すぎる時にはラインを送り込む事もあります。そうする事によって、フライを若干沈める事にもなります。

 この時、ラインは張りすぎず、緩めすぎずと言った状態を保ちます。川の流れの中でダウンクロスで狙う、ウエットやストリーマーフィッシングと同じ感覚です。

 流れが緩やかな時は、リトリーブが必要になって来ます。この時、ピッ、ピッといった鋭いリトリーブはあまりしません。どう表現したらいいのでしょうか?若干のラインの抵抗を感じる程度にスーッ、スーッと言った感じで行います。

 そして、フライが魚が居るであろうポイントを通過し、フライラインがまっすぐになった頃に、ゆっくりとリトリーブして行きます。この時もエバ釣りなどのように鋭くラインに急激なテンションを掛ける事はなるべくしないようにしています。

図−2. フライの流し方の一例

 基本はこんな感じなのですが、地形的なアプローチの制約や、波の周期などによっては常に理想的な状態ばかりで釣りが出来る訳ではありません。

 なるべく理想的な状態で釣りが出来るように、キャストする前にポイントがどんな状態なのかを観察する必要があると思います。

 出来れば、波が来て流れが変わる前にひと流しできるようにタイミングを計る事がフッキング向上につながると思います。

また、フライを流している時や、リトリーブ中のコツコツと小さなアタリが出る事があります。

この時合わせを入れてもほとんどヒットしません。慌てずにフライを流している状態の時はラインを若干送り込んだり、リトリーブ中であれば、ほんの少しポーズを長くとって見てください。

 これで必ずヒットするという保障はありませんが、ラインを送り込む事でドリフトしているフライの動きやラインテンションに若干の変化があるでしょうし、ポーズの合間に上手くフライを吸い込んでくれるかも知れません。

 小さなあたりばかりで、なかなかフッキングしない時は、フライパターンを疑う前にリトリーブ速度、アプローチの方法を見直す必要があるかも知れません。




4、最後に

 このように文章にすると簡単そうですが、釣り場ではいつもこのように上手く行くとは限りません。

 風が強かったり、波が高かったり低かったりとその他の気象条件など様々な要因がからんで来ます。

また、地形や波の制約を受け、常に理想的なポジションをとれる訳でもありません。逆に理想的な状態のポイントは釣り易く、ヒット率が非常に高いのも事実です。

 釣り場では、なるべく上記のような釣り方が出来るように心掛けていますが、時には流れにたいしてアップ気味にキャストする事もありますし、この流れが速ければ、ファーストリトリーブしなければラインが弛んでしまう事もあります。

 結局は、釣り場のその日の状況によって、ケースバイケースと言う事になってしまうのが現状なのですが、釣りを経験して行くうちに自然と身について来ると思います。。